◎山海の珍味壺蒸しスープ／桃花林 樋場正人 作（ホテルオークラ福岡）／広東料理


◎山海の珍味壺蒸しスープ／桃花源本店 善家繁 作（熊本ホテルキャッスル）／四川料理

　中国料理は薬膳として健康維持、若さ維持、長命の為に食すという感覚を筆者は持っている。その中でも山海の珍味を凝縮させて創り出されるのが「壺蒸しスープ」だ。一品だけで中国料理の小宇宙を感じさせる逸品でもある。

　上の２枚の写真をご覧頂きたい。前者はホテルオークラ福岡 広東料理 桃花林の「壺蒸しスープ」、そして後者は熊本ホテルキャッスル 四川料理 桃花源のものである。

　同じ中国料理だが、広東料理では各食材を戻して別々に調理を行い、そして合わせるといった手法で目の前に出されているように感じられた。琥珀色の透明なスープの中に、山海の珍味たちが静かに横たわっている。中でも宝石のようなウバザメの胸肉コラーゲンには意表を突かれてしまう。

　一方、四川料理のものは２２種類の山海の珍味を長時間煮込んで、こってりに仕上げているようだ。棗（なつめ）や山薬、高麗人参などをぎっしりと詰め込んで、その上に大きな乾燥蚫とフカヒレがスープの表面を覆っている。

　食べ出したら黙り込んでしまう「山海の珍味壺蒸しスープ」。黙り込むというのは「美味すぎる」だけではなく、一つ一つの食材に驚きと感激を持ち、ただひたすら夢中になって食している状態を言う。

　今回の「山海の珍味壺蒸しスープ」はどちらも甲乙付けがたく、双方の料理長の食材へのこだわりとその料理への大きな愛が伝わる極上の逸品としてお薦めしたい。

【ホテルオークラ福岡オフィシャルWEBサイト】
　http://www.fuk.hotelokura.co.jp/

【熊本ホテルキャッスルオフィシャルWEBサイト】
　http://www.hotel-castle.co.jp/