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和食の『器』その1・・・玉手箱のような『器』あり、逸品一品勝負の『器』あり。

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 筆者の写真集の中から、一瞬目に留まった『器』をランダムに数点選んでみた。四季折々の食材を大切に扱い、職人の心を語り、演出してくれるのが『器』である。

 洋食では『お皿はカンバスだ!』というものとは、やや趣が異なる、和食の『器』。蓋のあるなしに関わらず、季節感やその逸品を大切に盛るために、凄腕職人は丹念に『器』を選りすぐる。

 勿論、洋食で表現する『カンバス』に似たものとして、和食では『八寸』なるものが存在するが、深い歴史やストーリーが凝縮されたものとして配膳される。ここは、職人の腕の見せ所でもある。

 元々、フレンチにしても中華にしても、大皿にドーンと数人分サーブするのが昔のスタイルだった。これを現代的なものに進化させたのが、皆さんがご存知の『オーギュスト・エスコフィエ』。よって、フレンチの影響を受け、現代中華も個別に料理をサーブするようになっている。

 和食は昔から『素朴』なものであり、中国から伝わった豆腐にしても然り。しかし、江戸時代のベストセラーとなった料理本『豆腐百珍』では、バリエーション豊富な豆腐料理を紹介している。和食料理人の『繊細さ』、『季節感』、『食材への拘り』、『アイデア』が凝縮されている。

 以下の写真の通り、今回ご紹介するのは、『熊本ホテルキャッスル 細川料理長 脇宮盛久氏』の会席料理から数点選んだものや、『京料理えのきぞの料理長榎園豊成氏』の懐石料理から選んだものである。

 どれもこれも、ご覧いただくだけでお分かりのように、座して食す我々の心を和ませてくれる。蓋物は、「何が入ってるのかな?」と、そっと蓋を開ける瞬間がワクワクしてしまう。小さな『器』ながらも、まるで玉手箱のようだ。

 蓋を開けると、食材の彩りと共に、フワッと香りが伝わってくる。そこが料理人とお客との重要且つ微妙な接点でもあり、バトンタッチの瞬間である。それから、各々の食材の香り、食感などを楽しみながら、至福の時が過ぎて行く。

 静寂なる晩餐に最高の演出であり、心休まる至福の時に、『和食文化』への有り難さを感じる次第。これが、和食の醍醐味でもあり、グローバルに通用する、日本ならではの唯一無二なる『侘び寂びの世界』であろうかと。

 ホテルレストランや町場の高級食事処の和食は、決してお安くはない。されど、この熊本の地は、他所の大都市部のとは比較にならぬほどリーズナブルなものが多く、日頃から、県内外の知人友人にオススメしている。

 次回は、多種多様な『器』の写真を更に見つけ出し、ご披露できればと。

▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼熊本ホテルキャッスル 細川 脇宮盛久料理長
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▼京料理えのきぞの 榎園豊成料理長
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▼京料理えのきぞの 榎園豊成料理長
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▼京料理えのきぞの 榎園豊成料理長
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▼ホテルオークラ福岡 鉄板焼さざんか
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▼松島観光ホテル岬亭 素敵な『八寸』
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写真・文責:西田親生

                         

  • posted by Chikao Nishida at 2022/9/16 12:00 am

『師弟関係』の善し悪し。・・・ホテル、旅館に関して、危惧すること。

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 先ず、一般的なホテルに関して考察すると、料飲部は大きく分けて、洋食、和食、中華の三種がメインとなる。洋食においては、帝国ホテルのように個別直営レストランがなければ、フレンチやイタリアンが入り乱れた状態となる。時には、イタリアンと中華が合体している食事処もあるほどだ。言葉は悪いが、『ファミレス』感覚となっている。

 或るレストランを見ていて、ふと気づかされたことがあった。大変重大な問題点として、経営側の人間に『美食家』が少ないことであった。よって、料理メニューの客観的な評価ができないどころか、お客ニーズの緻密な分析を完全に怠っているように思えてならない。

 口喧しい、株主や社外取締役の一言で、右往左往している。客層は千差万別。そこで個人的な嗜好にてサジェッションをするのが罷り通るのであれば、そのレストランは私物化されてしまい、更に、料理長の意見も通らぬとなれば、空中分解してしまうのがオチとなる。

 更に更に悪いことに、自らが雇われ経営者であるにも関わらず、職位を強調するがあまり、ベテラン料理人たちを、弟子たちが『敬愛の念』を抱くような環境を確保していないのである。従って、些細なことで、弟子たちの夢が断ち切られ、料理人を辞めてしまい、別の職種に就くこともしばしばとなっている。

 いくらリゾートホテルやシティホテルと雖も、そこには土地柄というものがある。普段利用しているお客の『舌』を本当に理解しているのか否か。多分に、雇われ経営者たちは、自分が育った土地を中心に、視野狭窄にて、グルメのキャリア不足にて、料理自体を見ている危険性も無きにしも非ず。これでは、客が満足できるメニュー展開となり難い。

 ドイツ人が総料理長であるシティホテルでは、何処かにドイツの風が吹く。また、フランス人であったり日本人であったりと、その総料理長の好みや得手不得手が見え隠れするようなレストランも少なくはない。まあ、それはそれとして、異国の風が吹くのならば、食は新鮮でもあり楽しいものだ。

 ここで標題の『師弟関係』について考察したい。ご存知の通り、洋食と和食、そして中華は、それぞれに『師弟関係』のカラーや慣例が異なる。よって、ボスがオーナーシェフか、雇われシェフかによっても、環境も条件も全く異なってくる訳だ。

 ホテルであれば、それぞれの職位に対する給与体系があろうから、料理長であっても、セカンドであっても、ペイペイであっても、与えられた職位に見合ったサラリーを貰っているはずだ。(?)

 しかし、オーナーシェフが営むレストランとなれば、『師弟関係』がしっかりとしているが故に、弟子たちの待遇は良い時はすこぶる良く、悪い時は『我慢』の一声となるに違いない。勿論、覚悟をもって修行しているのだから、仕方ないと言えばそれまでだが。

 『和食の世界』ついて見ると、今も尚、地方の歴史ある食事処の二代目、三代目などは、東京や大阪、京都の有名老舗へ修行の旅に出る。それから数年後、現地で学んだものを故郷に持ち帰り、自分の父親の後を継ぐことになるが、これは一つのパターンらしい。

 ホテルの料理人について検証すると、実は、とても仲のいい同僚だとしても、全て『ライバル』であり、その『ライバル』を蹴落とさない限り上には登れず、先輩後輩の縦の関係などに固執せず、『実力主義』の『下剋上』を意識している元気の良い人間も多々いる。何とも、頼もしい。

 オーナーシェフが際立って凄腕の料理人でもあり、有能な経営者でもあるのならば、『暖簾分け』を積極的に進めるシェフも少なくはない。筆者の知る限りでは、京都の或るフレンチレストランのオーナーは、適時にきちっと『暖簾分け』を行い、東京進出から京都へ単独で戻ってきている。東京店はセカンドに譲ったと言う。実に、素晴らしい人物である。

 現在のようにニューノーマルな『天災の時代』に、この理想的な『師弟関係』が成り立つのが大変難しくなっているのではないか。下手をすると、旅館やホテルを追われた料理長が、弟子を根こそぎ連れ去って、厨房が完全空の状態になり、生産性が根こそぎ削がれて、経営が破綻する。

 十数年前に、或る旅館のオーナーから相談を受けたことがあった。それは、和食料理長が「オーナーと同額の給与を出さねば辞める!」と脅したと言う。結局、その料理長はスパッと辞めたのだが、案の定、若手の弟子を全員連れ出したのだった。因みに、その旅館は数年後廃業に追い込まれた。

 また、1964年の東京オリンピック頃の話だが、或る有名外資系シティホテルのドイツ人総料理長が弟子半数を連れ去り、新設予定のハイカラなシティホテルに身売りしたと言う。今で言う、ヘッドハンティングである。

 慌てた外資系シティホテル経営陣は、入社時に『シェフ希望』を提出していたが、他部署にいる社員に打診し、急遽、料飲部への異動を行い、空白となった厨房を全て埋めたという逸話が残っている。

 上のように、和食料理長にしても、ドイツ人総料理長にしても、『師弟関係』の良し悪しが見え隠れしていることになる。そこでボスを『師』と仰ぎついて行った弟子たちが皆育てば良いが、殆どの者が、後々、バラバラになったような気がしてならない。

 そこが、雇われの総料理長とオーナーシェフとの大きな違いではなかろうか。弟子の生活や人生が掛かっているのだから、最後まで面倒を見るのが、伝統の『師弟関係』であり、『師』の重責であったと思われる。

 この時代の若者たちは、欧米の影響か、『転職こそ美徳なり』で『A rolling stone gathers no moss.』と考えぬ人が多いように思えてならない。よって、今までのような古き『師弟関係』を全面的に受け入れる体質は皆無に等しいと言っても、過言ではなさそうだ。

 この時代において、『師弟関係』は善し悪しだが、少なからずとも、双方共に『大きな信頼関係』により成り立つものなので、そこに加えて『敬愛の念』があるのならば、いつの日か、『師』を超える腕の良い職人が次から次へ生まれることになると確信する次第。


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写真・文責:西田親生

                   

  • posted by Chikao Nishida at 2022/9/15 12:00 am

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