ロゼッタストーン東京ARTブログ

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東京理科大学 近代科学資料館

神楽坂にある、東京理科大学の付属施設 近代科学資料館。 東京理科大学の創立110年を記念して設立された資料館で、別名「ニ村記念館」とも呼ばれています。 

東京理科大学の前身である、東京物理学校の外観をコンピューター処理によって精密に復元した、明治期の洋館風の建物です。

ここには、近代科学の資料として貴重な、古典的計算用具や各社の計算機器類、録音技術の歴史資料などが展示されています。

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突然現れたのは、ネイティブ・アメリカンの計算用具。 動物の角に図案を描いて作られています。 計算機の歴史のコーナーでは、このように角や石、藁などを使った古典的な計算用具から始まり、手動・電気式計算機からパソコンへ続く歴史の流れが紹介されています。

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対数の原理を利用したアナログ式の計算用具。 計算尺には、この写真のような筒状のものや、円盤状のものがあります。

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ドイツやロシア、そして日本のタイガー社製の手動式計算機。 タイガー社は、大正12年に一号機「虎印計算器」を発売し、以来昭和45年まで販売を続けていました。

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別の部屋には、大型の計算機も展示されています。 これは「FACOM201 パラメトロン電子計算機」というもので、1960年から東京理科大学で研究用に使用されていたそうです。

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「Bush式 アナログ微分解析機」。 1931年に考案された大型計算機です。 こちらも理科大の研究室で実際に使用されていたそうです。



他にも、ここには紹介しきれないほどの、魅力的な機械がたくさん展示されています。 珍しい翡翠のそろばんや、化学天秤、リヒテンシュタインの手動式クルタ計算機などなど.....。 メカニカルなものがお好きな方なら、きっと楽しめますよ★


★東京理科大学 近代科学資料館★
http://www.sut.ac.jp/info/setubi/museum/Link


posted by ロゼッタストーン東京ART at 2013/7/6 12:19 am   commentComment [1] 

小町紅

女性の表情を美しく引き立てる色。 深紅。 化粧法の変遷の中で、日本古来の「紅」は、一般にはもうほとんど使われなくなりました。

かつて、紅の生産をリードしてきた京都の紅屋も次々と廃業してしまい、現在、この貴重な紅を作り続けているのは、東京の伊勢半本店さんだけとなってしまいました。

文政8年に創業されて以来、今でもほとんどの行程を職人さんが手作業で行っておられます。

港区の南青山に、この貴重な紅を見ることができる、伊勢半本店さんの小さなミュージアムがあります...。

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手のひらにすっぽり収まる、小さな有田焼の手まり。 下の器の内側に、紅が刷かれています。 このように、紅は、光で退色しないように陶器や貝殻の内側に何度も塗り重ねて、乾燥させた状態で販売されていました。

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蓋を開けると、玉虫色の紅が現れます。 純度の高い細かい粒子となった紅は、赤い光を吸収してしまい、乾燥すると補色である緑色の輝きを放つのです。 この玉虫色に光る上質の紅は、「小町紅」と呼ばれています。 

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紅の原料となる、紅花。 ちょうど今の季節(6月から7月にかけて)に開花する花です。 実は紅花に含まれる色素の99%は、黄色。 紅の原料となる赤い色素はわずか1%しかありません。 この貴重な赤を抽出する技術は大変難しく、かつて紅は金と等価交換されたほど高価なものだったのです。 紅は、化粧品の他、着物や和菓子の染料としても活用されました。

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紅筆に水を含ませて、玉虫色の紅を端の方から溶いてゆくと、たちまち鮮やかな赤に変わります。 何度も塗り重ねて乾燥させると、唇の上で再び玉虫色に輝きます。 浮世絵に、緑色の唇の女性が描かれていることがありますが、実はこの小町紅を塗った女性たちの絵だったのです。 江戸時代に「笹色紅」と呼ばれる化粧法が一世を風靡したといいます。 


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この愛らしい手まりの小町紅は、美しい化粧箱に入って、赤い縮緬の巾着も付いています。 水溶性の優しい染料は、その人の唇の色になじんで発色します。



伊勢半本店・紅ミュージアムでは、実際に紅を体験できる和化粧の講座も開かれています。 また、現代の漆芸作家の方々との共同プロジェクトで、江戸時代の「板紅」(携帯用の紅入れ)を蘇らせる試みも企画されています。

江戸後期は、刀の鍔などを作っていた職人さんたちが、美術工芸の世界にも参入してきた為、化粧道具にも素晴らしい逸品が残されています。 貴重な紅の歴史に興味があったら、是非このミュージアムを訪れてみてくださいね。





 
★伊勢半本店・紅ミュージアム★  http://www.isehanhonten.co.jp/museum/Link


posted by ロゼッタストーン東京ART at 2013/6/14 12:32 am   commentComment [1] 

フランスカメラ展

この世に、写真というメディアが登場した時、多くの人々は、絵画はその役割を終えて消滅するのではないかと考えました。
画家本人でさえも、自分の仕事は終わったのだと、筆を折った者もいたほどです。
けれども、その後、絵画は無くならなかった。
それどころか、これまでの記録媒体という窮屈な職能から解き放たれ、のびのびと、純粋に、画家の魂を映し出す鏡として、自由な表現を獲得したのでした。
写真の登場は、絵画を死に追いやるどころか、スタイルの多様化と新しい価値観の誕生を促す起爆剤にもなったのです。

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ともあれ、写真の出現は、人々にとって、大きな衝撃であったことには間違いありません。
当初はあまり好意的に受け入れられなかったこのメディアは、次第に隠れた能力と魅力を発揮し、私たちの生活と趣味の中で今や無くてはならない存在になりました。
このフランスカメラ展には、写真の発祥国である、同国の歴史的クラシックカメラの名品が集結しています。
カメラの前身であるカメラ・オブスキュラの発明から銀板写真に至る、光学器機の歴史と、そこに注がれた先人たちの技術と情熱に触れられる、カメラファンにとってはたまらない展覧会です。

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カメラが大好きな方へ。
是非、美しい銀塩写真機に会いに行って下さい。


「フランスカメラ展ー失われた時を求めてー」
2013年2月24日(日)まで。
日本カメラ博物館
千代田区1番町25JC?1番町ビル
東京メトロ半蔵門駅4番出口から徒歩1分

posted by ロゼッタストーン東京ART at 2013/1/28 11:34 pm  

たくみのたくらみ

今月の中旬まで、渋谷区のたばこと塩の博物館で開催されていた、「たくみのたくらみ」展。
江戸期の喫煙文化を支えた、珠玉の職人技が集められていました。

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大名や遊郭の太夫などが使用していた、たばこ盆や、きせる、たばこ入れ、着火具。
その工芸品に集約された、螺鈿や蒔絵、染織、指物、彫金、象嵌、鼈甲細工の数々..。
たばこ入れの前金具には、精巧な彫りで、動植物が生き生きと再現されています。

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全ての行程を人の手で紡ぎ上げた道具は、小さな金具ひとつにさえ、一切の妥協がありません。
けれども、これだけの高い美意識と技術をもって、後世に優れた作品を残した職人さんの多くが、
その名も残さず歴史の中に消えていったのです。

ある噺家の方が、「古典落語の作者の多くが、自分の名は残さず、素晴らしい作品だけを僕ら後世の噺家に伝えてくれたんです。その謙虚な姿勢に頭が下がります。私も現代の一落語家として、同じように後世に残る作品を制作してゆきたい」と述べておられました。

私たちは、未来の世代に何を残して、そしてどんな感動を与えることができるのでしょうか。

posted by ロゼッタストーン東京ART at 2013/1/21 01:06 am