
新聞社時代、当然にカメラはアナログ全盛であり、高速連写ができる小型機関銃のようなフィルムカメラが陳列棚にずらりと並んでいた。会社を創設したのが1990年。それからインターネット事業を開始したのが1995年。当時はCANON、SONY、RICOH、CASIOなどのコンデジは早くから使用していたが、我々庶民が使える一眼レフデジカメは無かった。
1999年の或る日、某店のカメラフロアを見て回っていると、Nikon D1という一眼レフデジカメの箱が眼に止まったのである。形は、保有しているNikonのフィルムカメラよりずんぐりむっくり。レンズ付きで80万円(本体65万円)を超える高価なものである。店主に手で触れることはないが、見せて貰えないかと頼んだら、「いいですよ!」と言って、手袋をして、そのD1なるものを見せてくれた。結構重いようだが、高画質の写真データをパソコンへ直接移行すれば、情報発信にも拍車が掛かると考えた。
仕様書も見ることもなく、「これ、下さい!」と言ってしまった。正直、理性を失い、後先何も考えずに、5歳児がオモチャを欲しがるように「これ、下さい!」と発してしまった。店長は、「本当にいいんですか?」とニコニコしながら梱包した。クレジットカードを差し出し、サインして完了。実は、心臓の鼓動が激しく速くなっていることに気がついた。何故なら、このD1を使って、取材でしっかりとクールな写真が撮れるかどうかの自信はなかった。プレビューできる分だけ楽かと、自分に言い聞かせた。
当時、そのD1を持ち出したのは、香港のスーパースター・レオという豪華客船のツアーであった。香港からベトナムのハロンベイ、中国などを周回して、香港に戻るコースで3泊4日を楽しんだ。しかし、D1をぶら下げて歩き回ると、妙な輩が数人付き纏った。アジア訛りの英語で「そのカメラと俺たちのカメラ3台と交換しないか!?」と執拗に迫ってくる、現地の観光カメラマン。勿論、ジョークであるが、中国本土の某都市に上陸した時は、前後左右に数人の男性が携帯で話をしながら、こちらをチラ見している。危険を感じ、左肩にぶら下げていたD1のストラップに頭を通し、右肩から斜めに掛けた。更に、カメラ本体を腹の前にずらし、左手で庇うようにホールドして、やや早足にて、数百メートル先で待機している観光バス目掛けてさっさと歩いて行った。
2003年に、コンデジの最高峰というか、ステータスというか、箱入り赤の皮ケース付きのLeica D-LUX(初代)との出会いも偶然だった。熊本市内の百貨店のカメラ部にて、箱入りでオシャレなデジカメが展示してあった。たまたま、その日に到着したものらしい。それがLeica D-LUXだったのだ。コンデジで13万円を超える値段。すこぶる悩んだ挙句、店員さんに「これ、下さい!」と言ってしまった。その後、Leica D-LUXは海外取材で活躍してくれた。
今まで、色んなコンデジや一眼レフデジタルカメラを使用してきたが、一眼レフになると、やはり「レンズが命」となってしまう。本体価格よりも高いレンズは万とある。取材に必要なレンズを揃えるとなれば、これまた、高級車が買えるほど金銭が飛んで行く。よって、レンズを選ぶ時は、よほど慎重に、機能や撮像例などを調べて購入を決めないと、非常に危険である訳だ。特に、単焦点で極めて明るいレンズは、かなり高額となる。色んなシチュエーションを取材して行くと、あのレンズが欲しい、このレンズは撮れないと、勝手な言い訳を作りつつ、所謂、「レンズ沼」にハマって行くことになる。どんなに頭痛薬や胃腸薬を飲んだとしても、この「レンズ沼」の病は治らない。困ったものである。
現在は、やや落ち着き気味にて、更に、熊本地震やコロナ禍を経験して、経済的に冷めているので、不治の病と思っていた「レンズ沼症候群」からは脱しているのかもしれないと、何度も自分自身を振り返ったのである。いやいや、意識していないから、その沼から脱しているように思えるのだが、Mac Book Proの画面でブラウジングしていると、いきなりリターンキーを押して、ポチりたくもなる。くわばら、くわばら。
▼Nikon D1(1999年購入)


▼Leica D-LUX 初代 コンパクト カメラ(2003年購入)


▼Leica D-LUXで撮影(イタリア/ローマ)

▼多種多様なレンズに囲まれても全く満足しない「レンズ沼」

▼Nikon Dfで撮影した彼岸花

▼Nikon D800で撮影したヒョウモンチョウとマリゴールド

▼Nikon D850で撮影した大鷺

▼Nikon D850で撮影した手打ちそば

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