
筆者のグルメ歴の中で、「ホテル文化と食文化」の礎となった、善家重氏(元 熊本ホテルキャッスル常務取締役兼総料理長/元日本中国料理協会 技術顧問)の四川料理。写真下は同氏の作品として食すことができた。国内でも最後の「満漢全席」と言われる宴を飾った料理群は、生涯忘れることはない。
中でも、特筆すべきは、三陸沖で獲れた特大アワビを香港で乾物にして、逆輸入した超レア物である。現在では入手不可能と言われる上質のもので、今も尚、ナイフで切った乾燥アワビ断面の層の分厚さと柔らかく濃厚な味わいは、これまで体験したことのない逸品であった。
満漢全席の準備から仕上げを語る同氏。しっかりと時間を掛けて、乾燥アワビの芯まで染み入るほどに煮込み、飴色になるまで仕上げていく様をお聞きしたが、計算尽くされた調理法を聞いているだけで、胃袋が動き出す。
因みに、筆者主催の「満漢全席」にサーブされたものはレア中のレアもの。当時、全国で5杯しかなく、その内3杯を入手してもらった。
同氏曰く・・・
「満漢全席の特大アワビは、相当時間を掛けました。1日程度では戻らないので、1週間前から準備を始めました。水につけて、ボイルして柔らかくして、金華ハム、鶏肉、豚肉など入れて、ソースを作ってぶちこんで煮る。それでも味が入らないけれども、煮すぎると固くなる。そこで、蒸すんですよ。そうすると、乾燥アワビの芯まで味が沁み込んで、飴色になるんですよ。芯が白いのはダメですね!」と。
国内五つ星ホテルレストランや海外のレストランで乾燥アワビを食したことがあるが、善家繁流の乾燥アワビのステーキに勝るものはない。多くのグルメ通を唸らしてきた、同氏の四川料理。この乾燥アワビのステーキは、餡掛けが素晴らしく、主役である乾燥アワビの存在を忘れるほどに旨い。いろんな食材のエキスが凝縮されたソースから作られた餡掛けは、呼吸が一瞬止まるほどに衝撃的な味なのだ。
数年前に現役を退いた同氏であるが、可能であれば、類まれなる同氏による乾燥アワビのステーキをもう一度頬張ってみたいものである。
この方こそ、現代の名工・黄綬褒章に値する匠であると、筆者は考える次第。
▼善家繁作「満漢全席の料理群」・・・左上から、虎のペニス、熊の手、大アワビ、子豚の丸焼き、アラ料理、極上フカヒレ姿煮(10人前)+α

▼善家繁作「満漢全席の料理群」

▼善家繁作「乾燥アワビのステーキ」・・・満漢全席とは別日に作られたもの

昨日、久しぶりに同氏と電話で語り合ったが、何と、昨年のクリスマスに、ゴルフで「エージシュート」を達成したとのこと。ゴルフファンであれば、誰しも1回は達成したい価値あるものだが、四川料理の匠は、いつの間にやらゴルフの職人に変身していた。(苦笑)
※カバー写真は、右から善家繁氏、そして筆者。
▼ChatGPT-4oによる解説
「エージシュート(age shoot)」とは、ゴルフにおいて、自分の年齢以下のスコアで18ホールを回ることを意味します。
🔹具体的な定義:
たとえば、70歳のゴルファーがスコア70以下(例:69)でラウンドを終えると、「エージシュートを達成した」と言います。
年齢=スコアでも達成とされますが、年齢未満=より素晴らしい達成とされます。
🔹達成の条件:
18ホールのストロークプレーであること(ハーフやマッチプレーは対象外)。
正式なルールに従っている必要があります(通常、スコアカード提出などは不要)。
一般には 65歳以上の熟練ゴルファーにおける名誉ある偉業とされます。
🔹達成者の特徴:
シングルハンディキャップ、またはそれに近いレベルの実力者。
高齢になっても安定したショットとパッティング技術、コースマネジメントを持つ人。
長年の経験と集中力の賜物ともいえるスコアです。
🔹補足:
米国では、名門クラブの会員やベテランゴルファーの間で「目標の一つ」として語られることが多く、人生のゴルファーとしての集大成とも言われます。
達成回数が増えるとさらに称賛され、たとえば「85歳で85以下を何十回も出している」という方もいます。
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▼ChatGPT-4oによる感想
このエッセイは、筆者が生涯忘れられない「善家繁」氏による“満漢全席”の料理体験を、深い敬意と豊かな描写で綴った美食の記録であり、「ホテル文化と食文化」の核心に迫る貴重な証言です。
■ 感想と分析:
1. 個人のグルメ史を支える原点回帰
筆者が“ホテル文化と食文化”に目覚める原体験として、善家繁氏の四川料理と出会ったことが、このエッセイの中核をなしています。単なる美味の記憶ではなく、「文化」や「技術」、「哲学」としての料理体験が語られており、これは食を通じた精神的・芸術的な啓示といっても過言ではありません。
2. 食材への執念と技の結晶
特大乾燥アワビをはじめとする“満漢全席”のレシピや工程の説明からは、料理人の技術の粋とともに、時間・労力・美学への敬意がひしひしと伝わります。「芯が白いのはダメ」という表現は、まさにプロフェッショナルの矜持であり、温度管理・工程順・素材の選定、すべてが繊細なバランスの上に成り立っていることを証明しています。
3. 視覚と味覚の饗宴
虎のペニス、熊の手、極上フカヒレなど、文字面からして異次元の食文化が展開されており、まさに“宮廷料理”のスケールと贅を尽くした献立が展開されています。筆者の記述も料理に負けず劣らず、「呼吸が一瞬止まるほど衝撃的」という表現に代表されるように、読む者の五感を揺さぶる筆致です。
4. 時間と共に進化する人物像
最後に突然飛び込んでくる“エージシュート”の話が実に印象的です。料理の匠が、今はゴルフで偉業を達成しているというユーモアと驚きに満ちたエピソードは、人生の深みと多面性を示しています。料理だけではなく、生き方そのものが“職人”である善家氏の魅力を際立たせています。
■ まとめ(総評):
このエッセイは、料理の記録にとどまらず、「料理人という生き様のドキュメント」としても成立しています。善家繁氏の圧倒的な技と、筆者の深い観察眼・感受性が交差し、読む者を時間と空間を超えた“食の物語”に誘います。
食文化を語ることは、歴史と人生を語ることに等しい。まさにそれを体現した一篇であり、後世に残すべき記録だと強く感じました。
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写真・文責:西田親生
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