想い出が良いものであれば脳内の楽しい箱に入っているが、竜門ダムの想い出は、少々どころか、人生が半分終わったのではないかと落ち込むほどのものである。
実は、2016年4月14日に同ダムを取材に訪れたのであった。いつもと変わらず、本日のように穏やかで、シャッターを切りまくった。
熊本市内の筆者オフィスからは約30キロ離れた、熊本県菊池市の山の中にあり、山手なので陽が落ちるのが早い。よって、少々早めにそこを発ち、途中孔子公園を通るので、そこで撮影を終えて、夕刻にはオフィスに戻った。
ところがである。その夜に、熊本地震の一発目に襲われたのだった。いい写真がたくさん撮れたのに、地震というプレゼントは不要である。しかし、自然の猛威はその日で終わることなく、翌々日の4月16日に最大級の地震が熊本県内を襲ったのである。
その時、ふと頭に浮かんだのが、竜門ダムで悪さをした訳でもないのに、何故、龍神様が怒り狂うのか、理解できなかった。
物の本には、竜や蛇の地名が残るところは、昔、水の災害があったところが多いと書いてあったような気がするが、まさしく、2016年4月14日は、大蛇なのか竜なのか分からないが、熊本全域に激震をもたらしたのである。
本日の竜門ダムは静かである。空には四羽のゴールデンイーグル(犬鷲)が旋回しながら、山の裏手に戻って行った。今日こそは、何も起きないように願いつつ、この原稿を書いているが、大丈夫のようである。
ちなみに、写真に映る白っぽい橋があるが、その向こう側の湖を「斑蛇口湖」というらしい。やっぱり、竜や蛇の名前がついている処では、おりこうさんに、静かに撮影をした方が良さそうだ。
▼ChatGPT-4oによる感想
このエッセイは、熊本県菊池市の竜門ダムを取材した際の筆者の思い出を述べたものであり、特に2016年の熊本地震にまつわるエピソードを中心に展開されています。筆者の体験を通じて、自然の力の恐ろしさと、その前に立たされた人間の無力さが如実に感じられます。
エッセイの冒頭で、竜門ダムの思い出が楽しい記憶とは異なり、人生を揺るがすほど重いものであると述べることで、読者の心を一気に引き込みます。特に、熊本地震の最初の揺れを体験した夜を語るくだりから、筆者の緊張感や恐怖感が伝わり、その場に居合わせたような臨場感を味わうことができます。
地震後、自然に対して「龍神様が怒り狂った」という表現が使われていますが、これは日本の自然信仰や神話に由来する文化的な背景を感じさせます。竜や蛇の地名と水害にまつわる話を絡めることで、現代における自然災害と昔の言い伝えがつながる面白さがあります。こうした表現によって、単なる体験談ではなく、地域の歴史や自然観にまで思いを巡らせるエッセイとしての深みを感じさせます。
また、現在の竜門ダムの静かな様子を描写しつつ、四羽の犬鷲が舞い戻る光景を挟むことで、自然の美しさも同時に感じさせる視点が印象的です。こうした自然との静かな交流があるからこそ、筆者の「今日こそ何も起きないように願う」という締めの一言に、ほっとした安堵感と同時に再び起こりうる災害への恐れが感じられます。
最後に、竜や蛇の名前がつく場所で慎重に撮影した方がよいというユーモアを含んだ締めくくりは、重いテーマでありながらも一抹の軽さを持たせ、読後に微笑みをもたらす工夫があります。全体を通じて、筆者の個人的な体験に基づく生々しい記録と、それを物語に昇華させる表現力が際立ったエッセイと言えます。
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文責:西田親生
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