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実録・昭和の豪傑(3)

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 今回もまた、「実録・昭和の豪傑」の第三弾である。

 30年ほど前、新聞社時代の豪傑を思い出すと限りなく見識高いが、頗る人間臭い先輩たちが沢山居た。その中でも、歌をこよなく愛し、宴会では最後までアカペラでも歌いまくる役員が居た。・・・太平洋戦争時、帝国陸軍少尉だった人である。

 その元役員と初めてお会いしたのは、筆者がまだ小学校4年生の頃だったと記憶する。奥様はミス日本のように美しく上品で、その長女は同じ小学校の一学年下の子だった。母親に似て、絶世の美女になるに違いない。比類なきオーラを既に放っていた。

 家族ぐるみの付き合いからか・・・筆者の自宅へ、深夜にちょくちょく現れる元役員は、当時、現役バリバリの若手記者だった事をよく覚えている。それから筆者は父の転勤で、各地の検察庁官舎を金魚の糞のようについて行ったので、中学生から社会人になるまで、殆ど会う機会が無くなった。

 ところが、新聞社に就職が決まり、初めてオフィスに入ると、どうも幼い頃に遊びに来ていた記者のような姿が見えたのである。確かに、当時の面影はあるが、重役として筆者のデスクから数メートル先に座っていたのだった。

 そこで、突然だが挨拶をする事にした。「大変お久しぶりです。お元気でしたか?」と話し掛けた。ところが、ニヤリと笑いながら、「お、決まったのか。話は聞いていたが、問題児のようなので、しっかりと鍛えるぞ!甘くないからな。」と返事があった。冷や汗ものである。

 「しっかりと鍛えるぞ!甘くないからな。」という言葉を今でも忘れる事はないが、正直なところ、かなり虐めに近いところもあった。筆者が言う事なす事、すべて否定的な言動が目立っていた。幼い頃から知り尽くしているのもあろうが、それは段々とエスカレートして、筆者への評価には黒丸(●)ばかりを付けていた。

 しかし、「実録・昭和の豪傑(1)」で書き綴った元役員の方が歳は若いが、今回の役員とは反目だったので、有り難い事に、随分楯となって貰い、水面下での虐め的なプレッシャーは、筆者のところへ来た時はかなり減衰していた。

 余談になるが、ある日、某部長や某課長たちの悪戯だが、朝から筆者のデスクと椅子が何処かに消えていた事があった。今で言えば、虐めそのものだろうけれども、筆者としては何喰わぬかをして、一日、立ったまま電話を受け取り仕事をした事もある。何も悪い事をしている訳ではないが、筆者の父が現役検察官である為に、そんな悪さをするのが彼らにとって楽しかったのだろうと。

 見識の高い人物ばかりが新聞社に居ると思い、その理想郷に足を踏み入れたのだが、まあ、とんでもないアウトローな人間も同じオフィスに居たことに、愕然とした事をよく覚えている。しかし、そんな小細工でヘコタレル筆者ではないので、何も問題はなかったと言うか、気にもしなかった。

 話は戻り、今回の元役員だが、毎日のように酒を呑んでいた。ある日、「お、お前も行くか!?」と誘われ、一度だけ、その元役員と飲み屋に行った事があった。今思い出せば、人柄は良いけれども、少々酔狂の気があったので敬遠していた。

 何故、一度だけのお付き合いにしたかと言えば、その時、私が親しくしていた先輩の個人的な悪口をペラペラと第三者の前で語り続けたのである。だから、どんなに幼い頃に世話になったとしても、それだけは許す事が出来なかった。そこまで、プライベートな事を責めるものではないと・・・よって、筆者は静かなる抵抗をすることに決めたのだった。

 それから、30年ほど、その元役員とは一切連絡も取らず、出来るだけ会わないようにしていた。酒は怖いもので、一瞬の内に人格さえ変えてしまう。僅かな時間だが、二重人格、多重人格かと思うほど、豹変する人も多いのである。更に、その自分の豹変振りに気付かないから、始末に悪い。

 ところが、昨年3月の事である。父が他界した時、通夜にその元役員が杖をついて弔問に来てくれた。私の前に立ちはだかり、「急な知らせで驚いたよ。まだ旅立つには早すぎる。わしも92歳となるが、最後のご挨拶に足を運んで来た。仕事頑張っているようだが、しっかりせんといかんぞ。わしも歳には勝てんので、酒も呑まなくなった。・・・」と語り、最前列に歩いて行ったのだった。

 酒の場で、その元役員と絶縁した筆者だったが、父や筆者の事を忘れず、杖をつきながら、タクシーで駆けつけてくれたのである。この三十年の絶縁が何だったんだろうと、自分を責めてしまった。人は思いも寄らぬ失言をする場合もあるが、それが全てではないと・・・些細な事で、大切な人間関係を絶った自分自身がやけに小さく見えてならなかった。

 通夜が無事終わり、帰り際に、再びその元役員が近寄って来た。「独りで通夜、葬儀と大変だろうが、私も90歳を超えたので、いつ命が絶えるか分からない。まあ、天国へ行けたら、お父さんと一杯呑もうと思っているよ。お母さんは66歳で早すぎたけど、しっかり足跡を残し、立派な仕事を完成しなさい。」と・・・。

 現役の頃と違い、実に優しい有り難い言葉であった。


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  • posted by Chikao Nishida at 2014/8/24 01:15 am
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