◎雑誌の山の中に埋まり込む様に座っている池田スズコさん。／午後１１時取材

　熊本市内栄通りに、心地よい昭和の風が吹く書店がある。店主は昭和７年生まれの池田スズコさん（７８歳）。昭和３２年（当時は旭通にあった）に貸本屋からスタートし、現在は雑誌や駄菓子などがびっしり詰まった書店の店番をしているお婆ちゃんだ。

　午前１１時から午前１時まで、娘と交代でこの店を守る。スポーツ好きで、孫が高校時代に野球をしていた頃に、一所懸命応援に行った事などを話をしてくれた。店内壁にはテレビがあり、時には周辺の店主らが野球観戦に来たりする。


◎写真撮影に目を細めるスズコさん。

　日頃見慣れた店だが、飛び込みで来る客は少なくなったと言う。以前は芸能人や色んな業界の人も足を運んで来たらしい。お婆ちゃんの宝物は、分厚い名刺フォルダーである。別冊が家に保管されているようで、それをめくりながら５０年間の時の流れを思い起こしているようであった。

　筆者は夜遅くに同店の前を通る度に挨拶する程度であるが、今日は取材方々話を聞く事ができた。核家族が進む今日、スズコさんとその娘で守るこの店には、良き昭和の風が吹き、昔ながらの日本の暖かな家庭の香りが充満していた。

　そのスズコさん曰く、「長生きの秘訣は粗食、そして店を長く持つのは無欲です！」と。


◎時折、舗道を歩く人の流れを見ているスズコさん。

【（有）三陽書店】
　〒860-0807 熊本市下通１丁目７番２９号
　TEL＆FAX 096-353-6764