
日本は欧米のIT先進諸国と比較すると、思いのほか遅れをとっている。しかし、多くの国民にはその自覚がない。その要因の一つは、「業種の定義」が旧態依然としており、新しい業種を受け入れにくい体質にあると考えられる。
一方で、地方の優良企業の中には、自社にIT専門セクションを設置したり、システム会社やIT関連会社を新設したりする例も増えてきている。
筆者は28年前にITに着手し、27年間IT事業を展開してきた。しかし、従来の旅館・ホテル、観光業、建設業、飲食業などでは、いまだにITを自らの事業範疇の一部としてしか捉えず、新しい独立した事業として認めようとしない傾向がある。
現在、ITを牽引しているのは、IT専門企業、システム開発会社、デザイン事務所、印刷会社、各種プロダクションなどである。しかし、古い「業種の定義」の枠内に押し込められたままでは、統制や連携は十分に機能せず、力が埋没してしまう。
ITの世界は本来、分野横断的である。Apple社を例に取れば、スティーブ・ジョブズの思想の源流であるタイポグラフィを出発点に、DTP、Web、データベース、デザイン、音楽、動画、CG、メタバースなど、すべてを高品質に統合し、新たな世界を築いてきた。したがって、Appleは単なるデバイスメーカーとは異なり、常に次世代を見据えることでGAFA(近年ではGAMAとも呼ばれる)と並び、世界最先端の巨大企業として君臨している。
しかし、その思想や流れを理解しない地方の経営者は、自らの業界の枠に閉じこもり、「視野狭窄」に陥っている。結果として、複雑で多岐にわたる分野を融合するITの本質を理解できず、いまだ昭和的な業種感覚にとどまっているのが現実である。
YouTuberに代表される新しい職業についても、地方の経営者の多くは価値を認めず、嘲笑する。しかし逆に、YouTuberを知らず、認めようとしないその態度こそ、時代遅れと笑われる対象になっている。
日本は先進国家を標榜しながらも、依然として「職業差別」の慣習を払拭できていない。古い業種のみを正当な業種とし、新しい職業を「下請け」と見下す傾向がある。これでは「グローバルスタンダード」の高さを理解できず、国際社会で恥をかくばかりである。
筆者がITを本業とする立場から述べているのは、単なる業界批判ではない。ITの世界は日進月歩どころか「秒進分歩」の勢いで変化している。ほんの一日でも油断すれば、全く新しい波が押し寄せ、対応を誤れば一瞬にして取り残される。地方経営者が「田舎には関係ない」と胡座をかけば、グローバル社会から完全に見放されてしまうだろう。
サイバーテロが世界全体に影響を及ぼす現状を見れば分かる通り、今やすべてがITの傘の下にある。かつてのように「地産地消」「自給自足」で成り立つ時代ではない。
ところが我が国は、どれほどIT関連省庁を新設しても、進化の「し」の字すら見えてこない。ITに精通した国会議員や官僚は少なく、数十人の「学識経験者」を並べただけでは、国民全体の意識改革にはつながらない。
子や孫の将来を真剣に考えるならば、いまさら「職業差別」「性差別」「パワハラ」「セクハラ」をグダグダと語る段階ではない。怪しげな新興宗教に依存する議員たちも含め、一度は自らをリセットし、清新な心で出直すべきだろう。
円安が進み、国力が脆弱化する今こそ、国家の大改造と国民意識の抜本的な改革に取り組まなければならない。このままでは、日本はアジアの中でも周辺に追いやられ、小さな島国として縮こまってしまうのではないかと、深く危惧している。

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