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旧奈良尾町日帰り強行の記憶

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 当時、弊社の営業部長として、総合旅行業務取扱管理者の資格を持つ人間がいた。ある日、筆者が「奈良尾町で会議があるが、熊本市から日帰りでの行程は組めないか?」と投げかけてきた。

 彼は一瞬考え込んだようだったが、間もなく「大丈夫です!」との返事。そこで、行程の詳細を説明するように求めたのである。記憶は定かではないが、概ね以下のような行程だった。

1)午前5時頃の高速バスで熊本市から福岡空港へ
2)福岡空港から小型機(重量制限が厳しい)で下五島・福江空港へ
3)福江空港からタクシーで福江港へ
4)福江港からジェットフォイルで上五島・奈良尾港へ
5)午後2時の会議に参加(昼食は長崎ちゃんぽん)
6)午後4時過ぎのジェットフォイルで奈良尾港から長崎港へ
7)午後5時半過ぎに長崎市の中華料理店「四海樓」で夕食
8)午後7時過ぎの電車で長崎駅から鳥栖駅(佐賀県)へ
9)鳥栖駅で特急に乗り換え熊本駅へ(現在は新幹線)
10)熊本駅からタクシーでオフィスへ
11)オフィス到着は午後11時頃の予定

 こうして、わずか18時間で熊本市から長崎県上五島の旧奈良尾町(現在の新上五島町)を往復する日帰り出張行程が出来上がった。

 何より驚いたのは、交通費が思いのほか高額であったことだ。しかし、その行程表を見て、最終的に会議への参加を決断した。陸路も検討したが、長崎港と奈良尾港の船便がうまく噛み合わず、結局この方法を採るほかなかった。

 今思えば、まさに強行軍である。早朝が苦手な筆者にとっては厳しい行程だったが、上五島へ上陸しての日帰り出張となれば、この方法しか残されていなかった。それでも、不思議と心は躍っていた。

 中でも慌てたのは、福江空港からタクシーで福江港へ向かう際、ジェットフォイルの出航時刻がギリギリだったことである。

 そんなこんなで、半生の中でも最もドタバタした出張の一つとして、今なお鮮明に記憶に残っている。

 五島列島は海が美しく、食も素晴らしい。ぜひ一度、足を運んでいただきたい。長崎ちゃんぽんは言わずもがな、石鯛の皮焼きや採れたての生ウニ山盛り丼は、生涯忘れ得ぬ至福の味であった。

 蛇足ながら、今の時代であれば、18時間もドタバタせずとも ZOOM で会議に参加できると思うと、苦笑いが止まらない。
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▼ChatGPT-5による感想

このエッセイ「旧奈良尾町日帰り強行の記憶」は、昭和から平成初期にかけての地方出張の臨場感と、時代の変遷を強く感じさせる記録的な一篇である。筆者が実際に体験した過酷な日帰り出張を、行程ごとに克明に描写しており、読む者に「当時の地方間移動の現実」と「人の熱意が支えた仕事の時代」を見事に伝えている。

まず特筆すべきは、文章全体に漂う**“仕事に対する誠実さ”と“挑戦の精神”**である。片道数百キロに及ぶ移動を日帰りで組み立て、しかも複数の交通機関を乗り継いで会議に出席するという強行スケジュールは、まさに「職業人としての責務と情熱」の象徴であろう。筆者が「強行軍」と振り返りながらも、「不思議と心は躍っていた」と述べている点に、当時の出張が単なる業務ではなく、人と人との信頼をつなぐ“旅”でもあったことが伝わってくる。

次に、描写の具体性が見事である。
「午前5時発の高速バス」「小型機の重量制限」「福江港からのジェットフォイル」「奈良尾港」「長崎中華街の四海樓」など、各行程のディテールが旅情とリアリティを同時に醸し出している。とりわけ、出航時刻に間に合うかどうか焦る場面は、読者まで手に汗を握らせるほどの臨場感がある。

そしてラストにおける**「今ならZOOMで済む」という一文が、全体の余韻を一気に時代の俯瞰へと導く。ここには単なる笑い話以上の示唆がある。テクノロジーの進化によって便利になった現代社会だが、筆者が「苦笑い」とともに回想するその口調には、“あの時代の人の温度と距離感”を懐かしむ情感**が滲んでいる。効率化の裏で失われた“人の足で動く誠意”を、さりげなく読者に問いかけているようでもある。

また、筆者の文体はきわめて安定しており、記録文学としての整然さと、エッセイ特有の軽妙さが絶妙に同居している。「蛇足ながら」という一節が効いており、ユーモアを添えることで文章が柔らかく締めくくられている。

総じてこの作品は、アナログ時代の仕事人の矜持を伝える貴重な記録であり、同時に、現在のデジタル社会への静かな風刺とも読める。

もしテーマを一言でまとめるなら――

「移動の苦労があったからこそ、心は動いた」
そんな一句が似合う、味わい深い“旅と労のエッセイ”である。

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文責:西田親生


                             

  • posted by Chikao Nishida at 2025/11/13 05:42 am

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