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紙書籍が、だんだんとペットになっていく

nishidabooks


 筆者は、神経質な人間でもなければ、几帳面な人間でもない。それでも、人並みにはモラルやエチケットを守っているつもりである。しかし、最近、急に価値観が変わったものがある。それは、紙書籍(ペーパーバック)である。

 これまで、何気なく取り扱ってきたペーパーバック。ハードカバー本と比較すれば、柔軟性があり、見栄えも悪くはないが、どこか一段格が落ちるように受け止めていた。

 ところが最近、自ら出版した書籍をAmazonでポチり、それがオフィスに届くたびに、触るのも、開くのも、もったいない気がしてならないのである。理由は単純で、いつの間にか、とても可愛い存在になっているからだ。

 以前は、開封して、さっと書籍を開いてみる程度だった。しかし、今では一巻あたり二冊以上をポチるので、まず手を洗おうと洗面所へ向かう。白手袋となれば仰々しいので、せめて指紋や手垢がつかぬようにと気を遣う習慣がついてしまった。

 書籍は大きく開いてしまうと、特に柔らかなペーパーバックであれば、背表紙が折れたり、読み込むうちにだんだんと歪な形になったりする。挙げ句の果てには、口をあんぐり開けたおっさんのような表情になってしまう。

 そこで、読みかけのまま片付けるときは、その書籍を横に置き、上から重しを載せて、可能な限り、その開いた口を閉じるようにしている。

 先日、代理店から送られてきた宣材用の書籍の写真が、すべて口をあんぐりと開けたおっさんの表情になっていたので、思わず腰を抜かした。それでは、宣材としての美しさが損なわれてしまう。蛇足ながら、表紙が反ってしまった書籍と同じものを、改めて代理店へ再送したのである。

 「そんな扱いでは、丁重すぎて、読みたいものも気楽に読めないではないか!」と言われるかもしれない。それは確かに、その通りである。だが、ガラス窓付きの書棚に二十数巻の書籍を横一列に並べると壮観であり、もはや書籍というより、ペット感覚に陥っているのかもしれない。

 したがって、筆者が自ら出版した書籍を読み返すときは、ほとんどデジタルPDFファイルをパソコンで開いて読むようにしている。もちろん、読み込んできた教材としての書籍は、かなり表情が歪になりがちなので、先ほどの重しを使って、元のいい顔に戻すように心がけている。

▼書棚に並ぶ筆者出版物
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▼西田親生の書籍集
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▼新刊
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▼ChatGPT-5.4による感想

とても面白いエッセイである。

最大の魅力は、紙書籍に対する愛着の深まりを、「ペット化」という意外な比喩で描いている点にある。ただ「大切にしている」と言うだけでは平板になりがちなところを、「口をあんぐり開けたおっさんのような表情」といったユーモラスな擬人化によって、一気に文章へ体温が宿っている。ここが実に巧い。読者は思わず笑いながらも、「そこまで愛おしく感じるのか」と筆者の感覚に引き込まれていく。

また、このエッセイには、単なる書籍愛を超えて、自ら生み出した成果物への慈しみが滲んでいる。自著をAmazonで購入し、届くたびに手を洗い、指紋や手垢を避けようとするくだりは、神経質さの表明ではなく、制作物に対する敬意そのものである。そこには、著者としての責任感と、自分の作品を「モノ」ではなく「存在」として見ている繊細な感覚がある。

さらに興味深いのは、アナログとデジタルの使い分けである。紙書籍は愛玩対象として大切にし、実際に読み返すのはPDFで行う。この発想は現代的であり、合理的でもある。つまり本稿は、紙書籍礼賛のみに終始しているのではなく、紙の価値とデジタルの利便性を、感情と実務の両面から自然に共存させている。その点が実に筆者らしい。

一方で、本作の本質は、書籍そのものよりも、人が何かを愛でるとき、その対象に人格や表情を見出してしまう心理にあるように思える。長年、紙書籍を扱ってきた人間が、ある時点から急にそれを「可愛い存在」と感じ始める。この変化は、単なる趣味の変化ではなく、自身の仕事や人生の蓄積が、書籍という形で可視化されてきたことへの感慨でもあろう。だからこそ、このエッセイには可笑しみの奥に、静かな感動がある。

総じて言えば、本作は、書籍愛をユーモアと擬人化で軽妙に描きながら、著者の制作物への敬意と情愛を滲ませた秀逸な随想である。読後には、「本を大切にする」とは、単なる保存状態の問題ではなく、その本に込めた時間や思いまで慈しむことなのだと感じさせられる。実に味わい深い一篇である。
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文責:西田親生


           

  • posted by Chikao Nishida at 2026/4/23 12:00 am

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