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自然体は最強の武器・・・

JOSUI


 誰だって、一日中物事が思うように進まないことがある。誰だって、何かを苦手に感じると、次の見えざる苦手に対して被害妄想となる。誰だって、思いとは真逆のベクトルへと導かれることがある。そこで、知らぬ間に、急に潮目が変わったり変わらなかったり・・・。

 いつまでも過去を思い起こし頭を痛めていると、次へのステップどころか、毎回振り出しに戻され、身動きできぬ状態に陥る。過敏にクヨクヨする人が多いが、何か物事が上手く行かねば、次から次へと負のスパイラルを呼び込んでしまい、結局は繭の中に閉じ籠ってしまう。

 どのようにしたら人から好かれるだろうか、こんな具合に話を持ち込めば相手は喜ぶだろうか、浅知恵を振り絞ってわざとらしく演出するから、何も良い答えは返ってこない。自身の体裁ばかりに気を取られ、本来進むべき道から逸れていることに気づかないのである。

 筆者は、若き社会人の相談事に対して、真っ先に「自然体」を諭すことにしている。あれこれ演出過多となっても、何も得るものもなく、何の解決にも至らない。本意をしっかりと伝えるには、「自然体」が一番だと諭すのである。万が一、それで相手と噛み合わねば、それはそれで善しと受け止めれば良い。

 あれこれ枝葉末節を支離滅裂に語り、遣っている感を演出したとしても、無意味なことである。結局、愚策や言い訳は簡単に見破られ、自身の信用の失墜をもたらし、捌けぬ人間、ええ格好し〜の人間、あてにならぬ人と、嘲笑されるばかりだ。

 また、優しさが「切り札」だと豪語する偽善者もいる。優しさを演出すれば善人風に見られ、物事が上手く行くと考えるからだ。それは偽善者の典型的な挙動であり、信用のおけぬ人として周囲の人たちは去って行く。飴と鞭と言うように、優しさには必ず厳しさがあってこそ、その優しさが際立つ。勿論、暴言、恫喝、暴力などは論外となるが・・・。

 義理堅い人物についても、表面的で損得勘定ありきの義理堅さ風では、本末転倒。本来の義理堅さとは、美辞麗句など不要。常日頃からお世話になっている方へは、仰々しく美辞麗句を並べなくても、毎日、お世話になっている方を思い起こし、感謝の念を持ち続けることが、義理堅さと言える。

 そうしている中で、自身が大切にしている方々への恩返しができる時に、それも互いに元気な内にしっかりと恩返しをしなければならない。一度でも助けられたら、助けて頂いた方が困っている時に、お役に立つことである。それは、死んでも忘れることのない「恩」であるからだ。

 何はともあれ、一つの問題を解決するのに、複雑に綾取りのような動きをしないこと。「自然体」を貫き、意に反する経緯、結果にバタつかず、ベクトルの微調整、修正に努めれば、必ず好転の風が吹いてくる。それも、慌てず急がず「冷静沈着」に、である。

 末筆ながら、前職時代の先輩A氏の話をしておきたい。公私共に大変世話になり、先輩後輩の関係というよりも、幼友達のような信頼関係であった。或る日、筆者の体調が急変し苦しんでいた時に、仕事を放り出して、一所懸命介抱してくれたのだった。

 しかし、残念なことに恩返しができないまま、その先輩は若くしてこの世を去ってしまった。先輩のウィッツに富んだトークと笑顔。厳しくも優しく、常に「自然体」で「率先垂範」の鏡であった先輩。筆者がこの世を去っても、決して忘れることはない。

 「我が人生の恩人」として・・・・・。


▼孔子公園のヒョウモンチョウと花々
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写真・文責:西田親生

         

  • posted by Chikao Nishida at 2021/9/11 12:00 am

食事処は仕入れが「命」・・・

JOSUI


 コロナ禍となり、遠出をしてまで、色んな食事処へ大勢で足を運べる時代ではなくなった。勿論、アルコールなしで、感染対策万全の店であり、尚且つ、モラルあるお客ばかりのところは、こちらもウィズマスクでルールを守り、安心して通える食事処もいくつかはある。

 東京オリンピックやパラリンピックが無事閉幕したが、その開幕前から、新型コロナウイルス感染のパンデミック発生。現在は大都市のみならず、地方の田舎町にまでクラスターが発生している。よって、観光施設や食事処は大変厳しい状況下に陥り、翻筋斗(もんどり)を打っているのが現状だ。

 近頃の野菜や牛肉の高騰は腰を抜かすほどであり、殆どのホテルや旅館は仕入れで頭を痛めているに違いない。だからと言って、粗悪な食材を仕入れて、不味い料理をサーブすれば、一瞬にして客が離れてしまう。ここで、食事処としては迷走せず、仕入れについての無駄無理検証をしなければならない。

 随分前のことだが、ホテル日航福岡の取締役総料理長 中橋義幸氏(※1)を取材したことがあった。そこで驚いたのは、同氏の食育への拘りと、逸早く、契約農家システムを構築し、野菜や合鴨農法の鴨などをフレンチレストランの食材としてフルに活用いるということだった。

 台風、豪雨、地震、そしてコロナ禍のような大災害時に、必ず、私たちの「命」を支える食材や生活必需品が急騰し、「不安」という文字が、頭のてっぺんに突き刺さってくるのである。今回のコロナ禍では、ガソリン代、牛肉、野菜などが、気付かぬうちに高騰しているのであった。

 食事処の流れを見ると、食材の仕入れによって、各メニューの料金が左右される。品質の高い食材を安値で仕入れることができれば最高だが、長年お付き合いのある卸業者次第では、下手すると、品質の悪い物でも、なあなあの仲良し倶楽部の誼みで、高値で持ち込む業者も無きにしも非ず。

 結局、表題の如く、食事処の仕入れ次第で「命」取りとなったり、好条件の仕入れができなくなれば、食事処のアキレス腱がブッツリ切れてしまう訳だ。その点、契約農家システムを構築した中橋氏の発案と采配ぶりは、すこぶる理に叶ったものとして、当時から注目してきたのであった。

 全国展開する回転寿司チェーンも、漁村で逆転の発想的で、巧妙なる仕入れのテクニックにて大成功を収めており、それに関わる人たちに「恵み」を与えている。中橋氏の契約農家システムも、ホテル側と生産農家との信頼関係が礎となり、その「絆」は今も尚続いていることになる。

 ここで食事処の経営者または勤務する中間管理職の方々へ問いたいのだが、従来の卸業者との信頼関係もさることながら、この時期において、何でもかんでも高騰したから、仕入れ予算を変えないのならば、質を下げよで動かざるを得ないところも有りはしないか!?、と言うことだ。

 自給自足ができない狭い日本列島。よって、国際的な物流の世界において、不安定なる仕入れに悩まされているのであれば、早急に、現状を具に検証し、卸業者の日頃からの卸値が、適正価格であるか否かを検証する必要は有りはしないか。そこで、光明が差すような秘策が見つかりはしないか!?

 どの世界も同じことだが、「馴れ合い」というのが一番癖の悪いものである。昔の話、ある宿のクリーニング代をチェックしたところ、周囲の宿の平均価格の倍額を10年ほど支払っていたことが発覚した。1億円を超える無駄な出費に押し潰されていたことになったのである。

 そこで、「1億円も、まあ、高値で騙してくれましたね!」と宿側が言えば、「いえいえ、5千万円ほどですよ!」と悪びれた様子もなく、「馴れ合い」の水面下にて、「儲かっている宿だから、倍額貰っても問題はないぞ!」と考えていたのだろうと。何という悪徳商売か!

 また、40年ほど前の話。仕入れで成功して、隆盛を極めたレストランがあった。最初は小さなレストランであったが、名物料理が当たりに当たり、既に年商5千万円を超えていた。その後、そのオーナーは北海道など全国を行脚して、上質の食材をダイレクトに激安にて仕入れ可能な契約を結んで行った。

 結果的に、立派な自社ビルを建て、多くのテナントを抱え、当時は、飛ぶ鳥を落とす勢いにて、大成長を遂げた。しかし、その店主が急死したために、何十年もの信頼関係を結んでいた生産農家や漁師さんなどとは疎遠となり、最終的に、自社ビルも売却され、廃業に追い込まれてしまった。勿論、コロナ禍の前の話であるが。

 前述のように、食事処は仕入れが「命」であるが、生産者との太いパイプに繋がれた「絆」があってこその物種である。今からでも遅くはないので、街場の食事処、ホテルや旅館など、今の時期であるからこそ、全ての仕入れの再検証をオススメしたい。そこには、起死回生となる「奇策の種」があるのかも知れず、新たな生産者との絶好の出逢いがあるかも知れないのだから・・・。
 
(※1)中橋義幸氏は、2003年に「ディシプル・ド・オーギュスト・エスコフィエ」を授与されている。


◎以下は、絶対的な仕入れのパイプを持つ五つ星ホテルの食材と料理

▼帝国ホテル東京のローストビーフ(ラ・ブラスリー)
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▼ザ・リッツ・カールトン東京の門崎丑(ひのきざか)
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▼ザ・リッツ・カールトン東京の蝦夷鮑(ひのきざか)
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▼ホテルオークラ福岡の豪華広東料理(桃花林)
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▼グランドハイアットの点心(点心専門中国人シェフの力作)
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写真・文責:西田親生

       

  • posted by Chikao Nishida at 2021/9/8 12:00 am

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