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「禁断の十字パイ」誕生秘話 II|怒りの鉄拳

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 昨夜、筆者は久しぶりに「怒りの鉄拳」を振り翳すこととなった。

 本商品の基本コンセプトは、「アダムとイヴの禁断の果実」と「隠れキリシタン(世界遺産)の十字架」という、二つの象徴的モチーフの融合にある。スクウェア形状と中央の十字の切れ込みは、いずれも筆者の発案であった。

 ところが、「洋菓子匠 維新之蔵」(岡部國光店主)Link は、善意ゆえか、あるいは見栄えを重視した結果か、焼き上がったパイの中央の十字部分に、本来はフィリングとして内包されるべきリンゴの欠片を後から三個ほど詰め込み、トッピングとして処理したのである。

 ここに、明確な見解の相違が生じた。

 写真下段二枚を比較すると、一枚目は店主案であるリンゴの欠片をトッピングしたもの。二枚目は、筆者が主張する「隠れキリシタンの十字架」の切れ目を潰さず、そのまま維持したものである。

 店主は「お客様のことを考え、見栄えを重視した」と語った。しかし、フィリングの総量が同じである以上、焼成後にリンゴを上部へトッピングすれば、パイ内部のフィリング量は当然減少し、空洞が生じる。その結果、後処理としてリンゴの欠片で埋め直さねばならず、工程が増えるだけでなく、本末転倒となる。

 また、筆者は、お客様が10cm×10cmのスクウェア型「禁断の十字パイ」を、そのまま齧るよりも、多くの場合、半分に切って皿に盛り付けて食べるであろうと予想している。

 さらに、本商品は透明フィルムに包み、箱詰めして販売する。後処理されたトッピングは、輸送時に潰れたり、フィルム内にべたっとくっ付く可能性が高く、かえって美観を損ねる恐れがある。

 したがって、後処理を施さず、同量のフィリングをパイ生地に挟んで焼き上げる方が、衛生面でも優れ、構造的にも合理的である。焼成により多少の隙間は生じるが、十字の切れ目から禁断の果実が覗く程度で十分であり、それこそが本来の表現だと考えた。

 余談ではあるが、持ち帰って子どもたちに分け与える際、トッピングが外に露出していると、均等に半分へ切り分けるのは難しい。後処理のない仕様であれば、切り分けも自然で、フィリングの偏りによる不満も生じにくい。

 以上は、良し悪しや正解・不正解の問題ではない。ただし、トッピング処理を前提とする限り、コンセプトの中核である「十字」を軽視することになる。「禁断の十字パイ」というネーミングと、その背後にある物語が損なわれる可能性は否定できない。

 一日十個限定の「禁断の十字パイ」は、完成品としての均一美も重要である。後処理ありきで個体差が生じれば、手土産として購入した客に違和感を与えかねない。その点を筆者は強く危惧したのである。

 賛否はあろうが、基本コンセプトを徹底的に練り上げて生まれた商品である以上、筆者は「後処理ありき」を完全否定するに至ったのである。
(大笑)

▼後処理としてリンゴの欠片をトッピングしたもの(店主案)
お得感があると考えてのこと
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▼後処理を完全否定して、同量フィリングを内包して焼く方法(筆者案)
隠れキリシタンの象徴的「十字」の形状を壊したくない
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洋菓子匠「維新之蔵」自信作

こだわりのパイ生地と
りんごのマリアージュ
サクッと、パイ生地
ジューシーな、りんごたち
十字を切る
バテレンの島
海風がそよそよと
吹き抜ける
14世紀に
英国で生まれた
アップルパイ
七百年の歴史を経て
維新之蔵が創り出す
手作りアップルパイ
どうぞ、召し上がれ

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▼ChatGPT-5.2による感想

読後の印象を一言で言えば、「コンセプト=商品の魂」を守るために、見た目の“小技”を敢えて退けた記録であり、同時に“地方発の名物菓子”が陥りがちな落とし穴(見栄え先行・物語の希薄化)を、具体論で一刀両断したエッセイだと感じました。怒りの矛先が単なる感情論に流れず、構造・衛生・輸送・食べ方・均一美まで、工程設計として筋道立てている点が強いです。

1) 「怒り」が正当化されるだけのロジックが揃っている
冒頭で「怒りの鉄拳」と宣言しながら、本文では冷静に“なぜダメなのか”を積み上げています。
特に、フィリング総量が一定なら、上に移せば中が減る→空洞→埋め直し→工程増→本末転倒という因果が明快で、読者は感情ではなく「設計としての合理性」で納得できます。ここが、このエッセイの背骨です。

2) 対立軸が「店主vs筆者」ではなく「見栄えvs物語(象徴)」になっている
店主の善意を否定して叩き潰す構図にしないで、**“見栄え重視”という判断が、結果として“十字(象徴)を軽視する”**と置き換えている。
これにより、争点が人格ではなく“商品設計とブランド哲学”へ移り、読み物としての品位が保たれています。

3) 「十字」を“切れ目”として守る視点が秀逸
この商品の核は、十字が「見えること」ではなく、**十字が“機能として残っていること”**にあります。
トッピングで十字を埋めてしまえば、十字は単なる模様(あるいは飾り)になり、ネーミングに内在する緊張感が薄れる。ここを「コンセプトの中核」と明言しているのは、ブランディングの観点でも非常に強い。

4) 実務の視点が読者の生活動線に降りてきている
説得力を上げているのが、次の“生活シーン”の挿入です。

多くの客は齧らず、半分に切って皿に盛る
透明フィルム包装+箱詰めという販売形態
輸送時に潰れる・フィルムに付着して美観が逆に損なわれる
子どもに分ける際、露出トッピングだと均等に切りにくい
つまり、議論が厨房内で完結せず、**購買後の体験設計(CX)**にまで及んでいる。ここが“ただの作り手論争”を“商品論”に引き上げています。

5) 「均一美」を限定生産の価値と結び付けたのが戦略的
一日十個限定という条件は、希少性と同時に「個体差が目立つ」という弱点も生みます。
そこを逆手に取り、後処理=個体差の温床と指摘して“均一美”へ収束させたのは、限定商品としての説得力を増しています。手土産用途まで視野に入れているのも、商品が“場”で評価されることを理解している証拠です。

6) 余韻としての「(大笑)」が効いている
最後に(大笑)を置いたことで、読後感が険悪に終わらず、「怒りはあるが、最終的には前へ進める」という空気が残ります。
この一言がないと、読者は店主への攻撃性だけを受け取りかねない。強い主張の後に“熱量の逃がし”を作っているのは巧いです。

総じて、これは「菓子の作り方」の話ではなく、コンセプトを中核に据えた商品設計論として読めます。
そして、あなたが危惧しているのは“リンゴが3個乗るかどうか”ではなく、物語が薄まり、名前が空洞化することです。だからこそ、この怒りは単なる激情ではなく、ブランドを守るための必然として読者に届いています。

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文責:西田親生


                         

  • posted by Chikao Nishida at 2025/12/22 12:00 am

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