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「おもてなし」とは!?

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 2020年の東京オリンピック開催が決定した瞬間に、日本人らしい「おもてなし」という言葉が国内外を一人歩きし始めた。どこに行っても「おもてなし」、どの業界を見ても「おもてなし」。正直、耳にタコができるほど似非「おもてなし」が横行している。

 しかし、「おもてなし」という言葉を多用する人たちほど、本来の「おもてなし」の基本を理解し実践しているのかと言えば、皆無に近い。ホテルで「サービス料」を別途請求するのは、上質の「おもてなし」の存在(海外におけるチップは「おもてなし」に対する評価の尺度)があるからだ。顧客とホテルの接点は、玄関、フロント、ロビー、そしてレストランホールであるが、「おもてなし」がどれほどのものか瞬時に露呈してしまうので、そこは危険地帯とも言える。

 ところが、「おもてなし」をハード面のみで捉え、大いに勘違いしているホテル経営者も多い。勿論、美しいレストルームや客室、レストランのテーブルや椅子など、清潔で高級感があれば、顧客に対して胸を張ってアピールできそうだが、「おもてなし」とは別次元のものである。例えば、世界最高峰のホテルでは、毎年5%のハード面のメンテナンス(20年間で一巡)を行なっている。それは、世界最高の「おもてなし」を実現するための環境を、日々維持するにある。

 また、常連客に対して、玄関までのお迎えに、ホテル重役がロビーあたりに降りてくることもしばしばあろうが、それは一般客との「差別化」であり、ホテル本来の「おもてなし」とは質を異にする。よって、その「差別化」があまりに仰々しければ、逆にホテルのイメージは良いとは言い難い。エンジン掛かりっぱなしの黒塗り公用車が玄関を埋め尽くしていても、一般客には違和感ばかりが伝わる。結局、適時適正適度な接遇が自然で美しく、心地良いホテルと言える訳だ。

 単に、言葉や表情、所作だけで「おもてなし」が伝わるかと言えば、それは不可能なこと。レストランホールを例に挙げれば、国内外からの顧客をしっかりと把握しているか、柱向こうの「死角」となるテーブル客へのコミュニケーションは寸断されてないか、次から次へとトイレに向かう客が多い時に定期的なレストルームのチェックはできているのかなど、顧客に直接見えないところでの緻密なる配慮が「おもてなし」の基本と言える。

 よって、常連客に対して、不自然な作り笑顔にて上品ぶったり、語尾を上げて無味乾燥な話をするのは、「おもてなし」とは無縁ものとなる。常に、顧客の安全管理を第一義に、円滑にテーブル席へ誘導し、顧客ニーズを迅速かつ正確に受け止めオーダーに繋げることが、ホテルレストランホールスタッフの仕事として、立派な「おもてなし」と評価されることになる。

 ホテル側の接遇は、スタッフ全員が紳士淑女でなければ、高いレベルの「おもてなし」を実践することは難しい。これが、五つ星ホテルと下層のホテルとの大きな「壁」でもある訳だ。顧客の提言をクレームと勘違いしたり、顧客への非礼な行為を言い訳にて正当化するなど、巷では、とんでもない似非「おもてなし」を展開しているホテルが多い。

 筆者は、旅先でも、一顧客としてホテルに対して、遠慮なく改善策を求めることがある。残念ながら、その提言に対して、しっかりと対応してくれるのは、10%ほどだろうか。後は、うやむやな中で、時間が解決する程度の話となり、施設側の「非」への猛省どころか、いつの間にかクレーマーのレッテルが貼られ、対峙の姿勢にてトラルブシューティングへと。結局は責任の所在が不明のままに解決不能となる。

 そこには、「おもてなし」を大前提とする接遇を無視し、私情を絡めるだけの、稚拙な子供のようで、ホテルマン精神を忘れた、「好き嫌いの世界」だけが存在しているようだ。ドアの向こうでは、客の噂話、誹謗中傷、揶揄の巣窟となっているに違いない。実にけしからんことだが、これが実態ではなかろうか。

 ホテルマンが表の顔と裏の顔を持った人間とすれば、勿論、その資質に欠けることになる。更に、上司がそのような「ルーモア大好き人間」であれば、後輩諸君はとても「不幸」である。反面教師として捉え、自らのスキルを磨く懸命な人も居ないわけでもないが、殆どが、上司や経営側のご機嫌伺いに傾注し、顧客のための「おもてなし」の心が欠落してしまう。大変、危険な傾向ではあるが、地方における多くのホテルの裸の姿であると言わざるを得ない。

 しかしながら、流石に帝国ホテル東京は違った。某月某日、地階の中国料理レストランへ足を運んだ時のこと。乾燥アワビのステーキをオーダーしたところ、ナイフで切ったら芯がある。熊本ホテルキャッスルの桃花源で長年にわたり食してきた、柔らかく濃厚で深みのある乾燥アワビとは全く異なっていた。チェックアウト時に、総支配人宛に手紙を渡したが、間髪を容れず、そのアワビの検証をホテル側で行い、丁重な謝罪と改善報告の手紙が届いたのである。この対応は実に迅速、適時適正な処理であり、1ヶ月後に再び同ホテルへ行くと、口頭でも直接謝罪と説明が行われたのである。

 「おもてなし」とは、常連客へぺこぺこと最敬礼をして、神輿を担ぎ、歯の浮くような会話をするものではない。諄いようだが、如何に顧客へ最高レベルの安心安全を担保し、多種多様な顧客ニーズに即対応することが、上質の「おもてなし」の基本と言える。いい格好して、顧客へ無駄口を叩く暇があったら、「死角」を如何に無くすかに集中する方がよっぽど懸命なホテルマンと言える。平たく言えば、顧客の「痒い所に手が届く」が、本物の「おもてなし」となる。・・・可能な限り「ノーと言わないホテル」が理想的なのかも知れない。


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  • posted by Chikao Nishida at 2019/1/3 12:00 am
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