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ロゴ「えのきぞの」に苦悩の挙句・・

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 日本料理 ENOKIZONOが、8月下旬に熊本市中央区新屋敷へ移転し、新店舗「えのきぞの」として立ち上がる。

 オープンが約ひと月後に迫る中、唐突に同店ロゴ制作のオファーがあった。伝統ある和食処のロゴとなると、すこぶる重責である。打ち合わせ途中で、間髪を容れず受けたものの、ここ数年遠ざかっている書をもって、ロゴができるか否か、不安の方が先立った。

 時間もない、筆の感触さえ忘れかけているけれども、受けたからには約束を死守しなければならない。倉庫から、当時使用していた筆15本ほど、硯、墨、毛氈、文鎮など書の一式を取り出し、先ずは筆と硯の洗浄、掃除から始めた。

 翌日、文具店に足を運び、半紙を購入し、オフィスに戻るや否や、頭の中で何度もぐるぐるとイメージした文字を指でなぞり、更に筆を持ち、同様に何度もなぞってみた。墨は奈良にある有名店のものなので、じっくりとすり始め、一気に書こうと心に決めた。

 実は、筆者にオファーがある前に、4点ほど候補があると言う。それらを見てしまうと軸がブレるので、一切外からの情報を遮断し、自分流で一気に書いていった。しかし、思いの外、筆が走らない。書けば書くほど、筆先が滞る。手首も指先も固く感じ、どうしてもイメージ通りに動かない。

 そうしている内に、お題である「えのきぞの」という文字を書くのを止め、水墨画みたいなものを描き始めた。絵であれば何度も重ね描きができるが、文字となるとそうはいかない。深夜に始めたロゴ制作が、気づけば夜が明ける頃になってしまった。

 「さあ、最後の一筆!」と自分に言い聞かせて、書いたものが下の書である。当初、何パターンか提出するつもりだったが、今の自分にできることは、この一筆のみだろうと思い、次回の打ち合わせ会議にこの一作を持ち込むことにした。

 重責が果たせるか否かは、現地でのオーナーシェフの反応次第である。・・・「これで、お願いします!」と一言。その一言が出るまでの時間は十数秒だったと記憶するが、筆者にとっては相当長い時間が経ったように思えた。

 結果的に、幸運にも筆者のロゴが選ばれた。正直なところ、ロゴデザインを制作する場合、今回のように頭を痛めたことはなかったが、スタッフが「いつも遊び半分でしたが、今回は真剣でした!」と言われて、なるほどと頷き、苦笑してしまった。

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  • posted by Chikao Nishida at 2018/7/29 12:00 am

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