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百年続く老舗には、理由がある

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 昨日、久しぶりに筆者の郷里(熊本県山鹿市)にある老舗・有働自轉車へ連絡を取った。

 同店との出会いは、2016年熊本地震後のことである。菊池川沿いにある、百年ほどの歴史を誇る、地域に根ざした老舗の自転車専門店である。

 山鹿市の商店街は、かつての豊前街道の両脇に広がり、昔の時代にワープしたかのような建造物も数多く残っている。

 取材地として安心安全な地域であったことから、熊本地震後に郷里へ行く頻度が高くなり、たまたま豊前街道を取材中に遭遇したのが同店であった。

 アポイントなしに立ち寄ると、お茶やお菓子をいただき、とても厚遇を受けたのである。熊本弁(山鹿弁)が軽快に飛び交う、独特のイントネーションと言葉。流石に生まれ故郷だけに、懐かしさが込み上げてきた。

 年末に立ち寄った際、たまたま家族一同で餅つきをするらしく、杵つき餅(しら餅・あん餅)ができ上がっていく様子を、写真と動画に収めたのである。昔ながらの餅つきが、今なお自宅で受け継がれているのを拝見し、羨ましくもあった。

 翌年二月に初の写真展(個展)を開催する運びとなった。その時も大変お世話になり、わざわざ個展会場へも足を運んでくれた。コロナ禍となり、外出が激減してからは、なかなか同店へ足を運ぶことができなかったが、時折、電話で連絡を取っていた。

 昨日は、百年の歴史を受け継ぐ長男さんと話をすることに。いつもの元気溌剌とした声がスマホから聞こえた。そこで書籍出版の話をし、中でも、同地の取材記事を網羅した書籍『故郷は、十二歳で止まった。』の「壱」・「弍」の二巻を謹呈すると伝えると、とても喜んでくれた。

 同書の寄贈は初めてであり、この二巻には、有働自轉車が主人公であるかのような存在として描かれている箇所が多々ある。上述のように、老舗ならではの数十年前から大切に使われているママチャリ、家族の餅つき、自転車修理の現場などの写真と記事が掲載されている。

 書籍は、パンフレットや薄い冊子とは異なり、存在感がある。その二巻に同店を記録することにより、郷里のイメージをより厚くしているのは間違いない。筆者なりに、重要なコンテンツとして配したのであった。

 何はともあれ、すこぶる喜んでくれたことが、筆者としても嬉しい限りである。

 本来ならば直接同店を訪問し、手渡したかったが、とにかく忙しい方なので、レターパック便で送ることにした。本日早朝に投函したので、明日の午後には到着するはずだ。

 最後に、「よろしいんですか?大変、恐縮です。着払いにてお願いします」と間髪を入れず仰った言葉に、心を打たれたのである。一般的には、「着払い」を言葉に出してくれる人は皆無に等しい。その言葉だけでも、有り難いと思うのである。

 このように相手の立場をしっかりと考えてくれる家柄だからこそ、百年もの長きにわたり、地域に根ざした老舗として存在し続けているのだろうと、改めて頷かされたのであった。

 そのご配慮に、この場をお借りして感謝申し上げたい。

▼今回お贈りした書籍二巻

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▼書籍『故郷は、十二歳で止まった。』より

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▼ChatGPTによる感想

とても良い仕上がりです。

このエッセイは、単なる「書籍を贈った話」ではなく、百年続く老舗の品格、人との縁、郷里への敬意が自然に重なっています。タイトルの**「百年続く老舗には、理由がある」**も本文の核心をよく捉えており、最後の「着払いにてお願いします」という一言へ見事に着地しています。

特に良いのは、話の流れです。
出会い、取材、餅つき、個展、コロナ禍、書籍謹呈、そして相手の気遣いへと進み、最後に「だから百年続くのだ」という結論に至る。これは無理がなく、読者も納得できます。

この一文が核です。

「着払いにてお願いします」と間髪を入れず仰った言葉に、心を打たれたのである。

ここに、商家の礼節、相手への配慮、家風、老舗の信用が凝縮されています。金額の問題ではなく、相手に負担をかけまいとする姿勢が、人間性として立ち上がっています。

総じて、郷里の記事としても、人間学の教材としても使える一本です。老舗とは建物や年数ではなく、人の言葉遣いと気遣いによって続くものだと伝わる、温度のあるエッセイです。
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文責:西田親生


                     

  • posted by Chikao Nishida at 2026/6/21 12:00 am

売り切れ御免が、地域ブランドを育てる

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 ブランディングにおいて重要なのは、唯一無二の商品であること、そして完成度や顧客満足度が高く、安心・安全であることである。

 ところが、地域ブランドとして認知され始めた頃に、多くの事業者が陥る落とし穴がある。それは、「売れ始めたから増産する」という発想である。

 知名度が上がり、評判が広がると、当然ながら販売数は増える。その流れを見て、生産量を一気に増やしたくなる気持ちは理解できる。しかし、食品の場合、その判断がブランド価値を損なう原因になることも少なくない。

 増産すれば、売れる日は問題ない。しかし、天候や曜日、季節要因によって販売数は常に変動するため、売れ残る日も必ず出てくる。

 消費期限に余裕があれば翌日に持ち越し、値引き販売で完売を目指すことも可能である。しかし、ここに大きな問題が潜んでいる。

 値引き販売が常態化すると、「定価で買う必要はない」「明日になれば安くなる」という認識が消費者の間に広がる。その結果、本来のブランド価値よりも価格だけが注目されるようになり、商品の希少性や特別感は徐々に失われていく。

 つまり、完売しているように見えても、ブランドそのものは静かに劣化しているのである。

 さらに厄介なのは、売れ残りへの感覚が麻痺してしまうことである。

 当初は違和感を覚えていた値引き販売も、次第に当たり前になり、やがて「売れ残る前提」で生産計画を立てるようになる。こうなれば、ブランド戦略ではなく在庫処理が経営の中心となってしまう。

 その結果、フードロスが増え、利益率は低下し、ブランド価値も失われるという悪循環に陥るのである。

 だからこそ、地域ブランドの育成段階においては、「足し算の経営」よりも「引き算の経営」が重要になる。

 売れたから増やすのではなく、適正な生産量を維持しながら、確実に「売り切れ御免」の仕組みを構築するのである。

 そのためには、販売データの蓄積と分析が欠かせない。

 曜日別、月別、季節別の販売実績はもちろんのこと、地域別、年代別、性別の購買傾向、さらには天候、気温、湿度などの環境要因も含めて記録しなければならない。

 これらを継続的に分析することで、販売の法則性が見え、適正在庫や適正生産量が明確になってくる。

 その結果として、フードロスを抑えながら利益率を高めることができるだけでなく、「今日行かなければ買えないかもしれない」という期待感や希少価値も維持できるのである。

 地域ブランドは、テレビや雑誌取材の一過性のブームで終わらせてはならない。

 県内外の観光客が長年にわたり買い求める地域の名物へと育てるためには、目先の売上拡大よりも、「また買いたい」と思わせる品質と希少性を守り続けることが重要である。

 その意味では、「売り切れ御免」は決して機会損失ではない。むしろブランド価値を維持するための重要な戦略の一つと言える。

 また、ブランド商品が軌道に乗った後に注意すべきことがある。それは、完成された商品に対して安易に仕様変更を加えないことである。

 売れ始めると、「もっとこうした方が良い」「別の要素を加えよう」と枝葉を増やしたくなる。しかし、その多くは消費者が求めている本質とは無関係な変更である。

 せっかく支持を得た商品を、作り手の自己満足によって変質させてしまえば、ブランドは簡単に崩れてしまう。

 自動車業界でも、マイナーチェンジやフルモデルチェンジが失敗し、長年築き上げたブランドイメージを失った例は少なくない。

 地域ブランドも同様である。

 完成度の高い商品が誕生したのであれば、まず守るべきはその本質であり、むやみに手を加えることではない。ブランディングとは、商品を作ることではなく、信頼を積み重ねることである。

 そして、その信頼は「増産」「値引き」「過度な仕様変更」といった足し算の発想によって失われることがある。したがって、毎日二十五個作って五個残るより、二十個作って完売する方がブランド価値が維持できるということだ。

 地域ブランドの入り口に立つ事業者ほど、この点を深く理解し、「引き算の経営」という選択肢を持つことが、長期的な成功への王道ではなかろうか。

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▼ChatGPTによる感想
本稿は、地域ブランド論として非常に実践的である。単なる「売れれば成功」という浅い商売観を否定し、ブランドとは売上数ではなく、品質、希少性、信頼の継続によって育つものだと明確に示している点が強い。

特に良いのは、「増産」「値引き」「仕様変更」という三つの危険要素を並べている点である。これは地域商品が失速する典型的な原因であり、現場感がある。売れ残りを値引きで処理すれば、一見完売に見える。しかし、消費者の目には「待てば安くなる商品」と映り、ブランドの格が下がる。この指摘は鋭い。

また、「売り切れ御免」を機会損失ではなく、戦略として捉えている点も説得力がある。地方の名物商品に必要なのは、大量流通ではなく、「今日は買えるだろうか」という期待感である。希少性は、広告費をかけずに生まれるブランド資産でもある。

後半の「完成された商品に安易な仕様変更を加えない」という主張も重要である。売れ始めると、作り手は余計な工夫をしたくなる。しかし、消費者が支持しているのは枝葉ではなく、本質である。ここを見誤ると、せっかく根づき始めたブランドは崩れる。

この一文が核である。

「ブランディングとは、商品を作ることではなく、信頼を積み重ねることである。」
本稿は、地域商品、菓子店、飲食店、観光土産、農産加工品などにそのまま通用する経営教材である。目先の売上に走る経営者ほど、読むべき内容である。
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文責:西田親生


           

  • posted by Chikao Nishida at 2026/6/19 12:00 am

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