最近、田舎の方の親戚とは全く会うこともなくなってしまった。昔を思い起こせば、田舎に行くと、いろんな発見があった。
新聞社時代に、山手の田舎の農家だったが、仕事で足を運ぶことがあった。玄関に迎えに出てくれたのは、八十前後のおばあちゃん。とても笑顔が素敵な方だった。
座敷へ通され、座布団の上で正座して待っていると、湯気が立つ、出来立てほやほやの蒸饅頭を皿に山盛り持ってきてくれた。
「若いから、全部食べれるでしょ!?」と。
昼過ぎであり、昼ごはんを食べる暇もなかったので、かなり空腹ではあったが、腹が空きすぎて、急に甘いものを食べる気持ちにはならないが、せっかくだから、お言葉に甘えることにした。
しかし、一個の蒸饅頭は、思いの外、ビッグサイズ。ひとくち饅頭ならさらっと平らげることができるが、これは、少々重すぎるのではないかと心配になった。
一個を6口ほどで完食。お茶を飲むと、胃袋の中で急に膨らんでくる。空腹時の甘いものは、かなり刺激が強いのに気づくや否や、おばあちゃんが突っ込んできた。
「出来立てほやほやだから、全部食べなきゃ!」と目を細めるおばあちゃん。これはこれはと思いつつ、それから二個、三個、四個、五個を、お茶で流し込みながら完食に至った。
座布団の上での正座のバランスが後ろに傾きそうで、かなり胃袋が膨れ上がったようだ。少々、肩で息をしなければ、結構、息苦しい。
そこへ、おばあちゃんが台所から、多くの種類の漬物を皿に盛って運んでくれた。
「ここじゃ、甘いもん食べたら、うちで漬けた漬物が一番だから!」と。
尺皿に盛られた、十数種類の漬物。なかなか、これほどの種類の漬物を見るのは久しぶりだが、見ていると、満腹であるのにご飯が欲しくなる。
しかし、漬物は一つ、二つを摘んで、用件を済ませて帰ることにした。
「あ、ちょっと待ってくださいな。漬物を土産に持って帰ってください。」と。
何袋か忘れたが、数種類の漬物がビニール袋に分けられ、輪ゴムで閉じて、それらを紙袋に入れ、受け取ることになる。ずしっと重い。
この地は山間部であり、GPSもなかなか正確に動かず、携帯電話が繋がらい所でもあった。
段々と陽は沈んで行くので、明るい内にオフィスに戻らなければらない。外気は結構冷たく、車内は暖房が必要なくらいだ。
しかし、何となく車内が酸っぱそうな、甘そうな、塩っぱそうな臭いが充満してきたように感じたのである。
途中で、車を路肩に停めて、後部座席を見ると、何と、紙袋の下部がじっとりと濡れており、いつくかの漬物の汁がこぼれていたのであった。
ようやくオフィスに戻り、後部座席に沁みた汁を拭き取ったのは良いが、なかなか漬物の臭いが取れそうもない。1時間ほど頑張ったが、長距離運転で疲れていたので、翌日、再度挑戦することにした。
翌朝、早速、駐車場の車に近づきドアを開けると、昨日よりもモワッとした漬物の臭いとアルコール、洗剤などの複合した臭いが籠っており、苦笑いするばかりであった。
田舎の農家の豪快なご接待は、とても優しく、とても有り難かった。ただ、豪快すぎるご接待に、思い起こす度に、吹き出して笑いが止まらないのである。
既に数十年が経っているので、笑顔が素敵なおばあちゃんの姿があれば良いけれども、機会があれば、その周辺を車で回ってみようかと・・・。
※カバー写真はイメージ(generated by Mid-journey)
▼ChatGPTによる評価
このエッセイは、田舎の農家での豪快なご接待に関する軽快でユニークなエピソードを描いています。筆者が新聞社時代に仕事で訪れた田舎の家での出来事を通じて、親しみやすいおばあちゃんやその家庭の温かい雰囲気が描かれています。以下は、いくつかのポイントに基づいた評価です。
1)ストーリーテリングと文章構成
エッセイは簡潔でありながらも、ストーリーが分かりやすく進行しています。田舎の農家での出来事が生き生きと描かれ、読者は筆者の経験に引き込まれます。筆者が直面した状況や感じたことが、具体的でリアルに表現されており、読者は筆者の視点からエピソードを楽しむことができます。
2)キャラクター描写
おばあちゃんのキャラクターが鮮明に描写されています。笑顔が素敵で、豪快かつ親しみやすい態度が読者に印象づけられます。これはエッセイに深みと人間味を与えています。
3)ユーモア
エッセイにはユーモアが散りばめられており、特におばあちゃんの大胆なご接待に対する筆者の反応が笑いを誘います。笑いの要素が適切に挿入されていて、読者を楽しませています。
4)結びつき
エッセイは結びつきがあり、最後には田舎の農家でのご接待に対する感謝の気持ちが表現されています。また、将来的な再訪の可能性も示唆されており、物語には良い締めくくりがあります。
総じて、このエッセイは軽快な語り口と面白いエピソードによって読者を引き込む成功したものと言えます。
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写真・文責:西田親生
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