ロゼッタストーンBLOGニュース

The Rosetta Stone Blog

不器用な人間の真剣勝負|「禁断の十字パイ」から「武士の十字パイ」へ

20260906mononofu-1


 本日、オフィスに一冊の本が届いた。

 『禁断の十字パイ|西田親生流Branding』。これまでに出版した二巻を一冊にまとめた統合版である。

 ページをめくると、この一年近くの試行錯誤がよみがえる。そして、あらためて思った。店主の岡部國光氏は、よくぞ粘り強く向き合ってくれたものだと。

 熊本県天草市の「洋菓子匠 維新之蔵」で、「禁断の十字パイ」のブランディングに着手したのは、昨年十月のこと。そろそろ一年になろうとしている。

 少々失礼な言い方になるが、岡部氏は決して器用に立ち回れる人ではない。お人好しで、正義感が強い。人を信じすぎて、利用されることもある。放っておけない、憎めない人間である。

 その人柄は、菓子作りにも顔を出す。

 もっとおいしくしたい。もっと喜んでもらいたい。その気持ちが先に立ち、原価への目配りが後回しになるほど、材料も手間も足してしまう。彼にとって「足し算」は、客への誠意だったのだろう。

 しかし、小さな店で日々作り続けるには、時間にも手間にも限りがある。工程を複雑にすれば、それだけ製造の負担は増す。思いを込めることと、何もかも盛り込むことは、必ずしも同じではない。

 目指したのは、無理なく作り続けられ、しかも、そこに込めた物語が伝わる菓子だった。何を加えるか。その前に、何を残すか。これが、私たちにとって一番の課題であった。

 ところが、彼は足す。こちらが引こうとすると、また足す。短気な筆者は、そのたびに強い言葉を投げかけた。今、振り返れば、伝えるべきことはあっても、伝え方には工夫の余地があったはずだ。彼が菓子作りに苦労したのと同じくらい、筆者への対応にも苦労したことは想像に難くない。

 それでも、やり取りを重ねるうちに、彼は「引き算の美学」に関心を持つようになった。余分なものを削り、残したものを生かす。「シンプルが一番」という考え方が、少しずつ製造にも表れるようになったのである。

 そんな彼を不器用だと書きながら、筆者もまた、人のことを言えない。器用そうに見られることはある。しかし、実際には「力技」で押し切ろうとする場面が結構多い。

 初めてゴルフクラブを握ったのは、中学三年生の頃だったか。技で運ぶというより、力任せに飛ばそうとするゴルフだった。思えば、仕事にも似たところがある。相手に伝わるまで言葉を強めてしまうのも、その不器用さの一つなのだろう。

 ただ、簡単には諦めない。出来上がったものに違和感があれば、削っては加え、加えては削る。遠くから眺め、今度は細部に目を凝らす。どこか不自然ではないか。無理が生じていないか。そうして、何度でも手を入れる。

 届いた本を読み返しながら気づいたのは、彼もまた、彼なりのやり方で同じことを続けていたのだということだった。

 こちらの要求に戸惑う日もあっただろう。強い言葉に、気持ちが沈む日もあったかもしれない。それでも、少しでもおいしいものを作り、店の名物に育てたいと、試行錯誤をやめなかった。

 「禁断の十字パイ」は、その積み重ねから生まれた。

 器用だから、よいものができるとは限らない。それでも、不器用なまま向き合い続けた時間は、確かに一つの菓子になったのである。

 まずは、この一年近く、本当にお疲れ様でしたと伝えたい。

 ところが、そんな感慨に浸る間もなく、次の話が動き出した。

 昨夜遅く、二人で電話をしていたときのことである。四方山話の中から飛び出したのが、第二弾「武士(もののふ)の十字パイ」の構想だった。

 思い立つと待てない筆者は、本日早朝にはフライヤーの試作版を作り、非公開のFacebookに掲載。さらに、構想を記事として公開してしまった。

 まだ開発準備手前の段階である。それでも公にしたのは、次の挑戦を言葉にすることで、彼の覚悟を確かめるとともに、筆者自身も責任を持って向き合いたかったからだ。

 また、名前や形だけでは、この菓子に込める物語までは伝わらないとも考えている。これまでの試行錯誤と、これから店主が重ねていく仕事。その両方があってこそ、一つのブランドとして育っていくはずである。

 本日午後、彼から電話が入った。

 「責任の重さを感じております。ブランディングの趣旨に恥じぬよう、気合を入れて対応します」

 喜びとともに返ってきたのは、そんな言葉だった。短い言葉ではある。しかし、そこには、これまでの苦労を次につなげようとする意志が感じられた。筆者には、それが何よりうれしかった。

 一年前から続けてきた挑戦が、次の夢の入り口にたどり着いた。そう思えたのである。

 動いたからといって、必ず報われるわけではない。それでも、手を動かし、誰かと話し、試してみることで、次の可能性に出会う機会は増えていく。

 昨夜の電話も、その一つだったのだろう。夜中の四方山話が、新しい菓子の出発点になった。

 読者の皆さまには、そんな店主の挑戦を、温かく見守っていただければと思う。

 小さな店で、岡部氏は今日も「禁断の十字パイ」を作っている。「売り切れ御免」としながら、食品ロスを出さないよう努めている。

 これから涼しくなれば、県内外の皆さまにも味わっていただく機会が増えることを願っている。ご注文(電話またはファックス)の際には、数量や発送について、店にご相談いただければ幸いである。

 まずは一つ、「禁断の十字パイ(三姉妹)」を召し上がっていただきたい。そして、その先に生まれる「武士の十字パイ(三兄弟)」にも、ご期待いただければと思う。

 不器用な二人の真剣勝負は、まだ続いているのである。

※ヘッダー画像は、ChatGPTが描いた本人の似顔絵

▼現在製造中の「禁断の十字パイ(三姉妹)」
20260906mononofu-2


▼昨夜飛び出してきた「武士の十字パイ(三兄弟)」(プロトタイプ)
20260906mononofu-3


20260906mononofu-4


新刊「禁断の十字パイ|Branding」
A5判 233ページ

https://amzn.to/3UGjDSMLink Link

20260906mononofu-5


20260906mononofu-6


▼西田親生の書籍集
https://amzn.to/4xYptxPLink Link
20260906mononofu-7



----------

▼ChatGPTによる感想

読後に残るのは、菓子そのものへの興味とともに、「この二人の仕事が、これからどう育っていくのかを見届けたい」という気持ちです。商品開発の経緯に、衝突と反省、相手への敬意が重なり、人間関係を読む面白さがあります。

特に印象的なのは、店主の「足し算」を、客への誠意として捉えているところです。原価や工程だけで評価すれば非効率に見える行為にも、「もっと喜んでもらいたい」という理由がある。その気持ちを認めたうえで、作り続けられる形を探すため、引き算の必要性にも説得力が生まれています。「何を加えるか。その前に、何を残すか」は、この仕事の難しさを端的に伝える一節です。

また、筆者が自分の不器用さに目を向けることで、文章に奥行きが出ています。店主を評する側にいた筆者が、自分の伝え方を振り返り、相手もまた同じように粘り続けていたと気づく。相手を見る目が変わる瞬間が、このエッセイの読みどころだと感じました。

「不器用なまま向き合い続けた時間は、確かに一つの菓子になった」という一文には、その気づきが集約されています。努力を抽象的に称えるのではなく、目の前にある菓子へと結びつけているため、読者も、その一つを味わってみたくなります。

終盤は、一冊の本で過去を振り返るところから、夜中の電話で次の挑戦が始まるところへ、自然に視線が移ります。完成を祝って終わらず、また仕事が動き出す。その流れが、最後の「真剣勝負は、まだ続いているのである」に実感を与えています。

私には、店主への労いであり、筆者自身の反省であり、これからも一緒に作っていくという意思を表した文章として響きました。二人の不器用さが具体的に描かれているからこそ、その先に生まれる菓子にも関心が向くエッセイです。
----------
◎ロゼッタストーン公式サイト(since 1995/熊本県第一号WEBサイト)
 https://www.dandl.co.jp/Link Link
文責:西田親生


                     

  • posted by Chikao Nishida at 2026/9/6 12:00 am

「禁断の十字パイ」に続く、「武士の十字パイ」

20260905kindan-1


 着想の起点は、宇土城主であり、キリシタン大名でもあった小西行長と天草とのつながりだ。行長は実際に天草へ渡り、宣教師やキリシタンの武将たちとも交流を重ねている。その歴史に想を得て、「武士の十字パイ」を発想した。

 読みは、「もののふのじゅうじパイ」。武士の力強さに、信仰を胸に生きる人間の静かな内面を重ねた名である。

 昨年開発した「禁断の十字パイ」は、洋風かつ女性的な世界観から生まれた。Apple(イギリス)、Baklava(トルコ)、Cerise Crown(アメリカ)。それぞれの頭文字を取り、ABC三姉妹と名づけた。

 その三姉妹に続くのが、和の趣と男性的な力強さを備えた、DEF三兄弟である。

 Dは、大納言(Dainagon)。ほっくりとした豆の甘みに、クリームチーズのコクとほのかな酸味を合わせる。

 Eは、恵比寿かぼちゃ(Ebisu)。かぼちゃの豊かな甘みをバターで練り上げ、こってりと濃厚な味わいを目指す。

 Fは、いちじく(Fig)。ドライいちじくを濃厚に煮詰め、クリームチーズとともに包む。凝縮した果実の甘みと、ぷちぷちとした食感を楽しむ一品にしたい。

 凛々しい姿に、頬が緩む味わい。このDEF三兄弟には、そんな魅力を持たせたいと考えている。

 もっとも、構想がそのまま、おいしさになるわけではない。フィリングの甘さや水分、パイ生地との釣り合い、焼き上げたときの香り。一つひとつを確かめ、調整して初めて、思い描いた味に近づいていく。

 製造を担う「洋菓子匠 維新之蔵」では、クリスマスケーキの準備も進んでいる。その合間を縫っての試作となるため、昨年と同じ速度での開発は難しそうだ。

 ならば、その時間も味づくりに生かしたい。試作を重ねるたびに、構想を見直し、三兄弟それぞれの個性を磨いていく。

 物語に心を引かれて手に取り、ひと口食べて納得し、もう一度食べたくなる。そこまで届いてこそ、商品に名前と物語を与える意味がある。

 「禁断」の三姉妹から、「武士」の三兄弟へ。

 まだ試作前だというのに、焼き上がりを待つような心持ちでいる。いやはや、商品開発とブランディングは、面白くてたまらない。

▼武士の十字パイ<三兄弟>(開発開始)
20260905kindan-2


▼禁断の十字パイ<三姉妹>(開発販売中)
https://amzn.to/4x6E0pGLink Link
20260905kindan-3



----------

▼ChatGPTによる感想

読後に残るのは、「このパイを食べてみたい」という期待と、その完成を待つ楽しさです。歴史から名前が生まれ、名前から味の構想へ進み、最後には作り手の心持ちに触れる。読者が開発の過程に自然と参加できる文章になっています。

特に印象的なのは、**「凛々しい姿に、頬が緩む味わい」**という一文です。「武士」という言葉の硬さを、お菓子の親しみやすさへと結びつけています。商品の姿と、それを食べる人の表情が同時に浮かぶ、この企画の魅力をよく捉えた表現です。

三つのフィリングも、味だけでなく食感で描き分けられています。大納言の「ほっくり」、かぼちゃの「こってり」、いちじくの「ぷちぷち」。読者は説明を読みながら、自分ならどれを選ぶかと考えられる。ABCからDEFへ続く仕掛けも、三姉妹を知る人には続編の楽しみを、初めて知る人にはシリーズ全体への興味を生みます。

また、**「構想がそのまま、おいしさになるわけではない」**と書いたことが、文章に説得力を与えています。試作の必要性や製造元の事情を率直に示しているため、華やかな名前を支える地道な仕事が見える。「もう一度食べたくなる」ことを到達点に置いた姿勢にも、商品開発への誠実さを感じます。

一つ気になったのは、Appleなどに添えた国名です。それぞれが「発祥国」「味の着想元」「商品上のイメージ」のどれを示すのか、本文だけでは判断しにくいところがあります。意図をひと言添えると、読者が迷わず世界観を受け取れるでしょう。

結びの「焼き上がりを待つような心持ち」には、企画者自身の楽しみがにじんでいます。完成品のお披露目前から、読者と期待を共有する開発エッセイとして、魅力のある文章です。
----------
◎ロゼッタストーン公式サイト(since 1995/熊本県第一号WEBサイト)
 https://www.dandl.co.jp/Link Link
文責:西田親生


                         

  • posted by Chikao Nishida at 2026/9/5 12:00 am

1995年以来情報発信している老舗ポータルサイト「ロゼッタストーン」のブログをお楽しみ下さい。詳細はタイトルまたは、画像をクリックしてご覧ください。

behanceオブスクラ写真倶楽部ディー・アンド・エルリサーチ株式会社facebook-www.dandl.co.jp