第7話 地獄の彦一

イラスト

彦一もとうとう死んだ。さんざん人も狐もだまかしたもんだけん、地獄行きはきまっとると思うち、いまわのきわにカカさんに、重箱二段にケランモチ、もう一段にはアンの代りにワサビば入れち作らせて、そるばさげて地獄へ行ったげなたい。

「彦一、もう来るだろうと待っとったぞ。」

と、エンマさんが言わした。

「エンマさん、お世話になります。みやげば持って来ました。はようたべてくだはり。一段目はケランモチ、二段目はずっとうまかケランモチ、三段目はまあだうまかもんですが、こやつは、川の中で食わんと味が出まっせん。」

エンマさんが三段目の重箱ば持って川につかって、一つ口に入れたら、

「わあっ」

と泣き出してバタグルわした。いつもエンマさんにこきつかわれとる鬼になわでしばらせち、

「エンマさん、私ばほどようしなっせよ。」

と言うちニコッと笑うたげな。


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