![]() 彦一もとうとう死んだ。さんざん人も狐もだまかしたもんだけん、地獄行きはきまっとると思うち、いまわのきわにカカさんに、重箱二段にケランモチ、もう一段にはアンの代りにワサビば入れち作らせて、そるばさげて地獄へ行ったげなたい。 「彦一、もう来るだろうと待っとったぞ。」 と、エンマさんが言わした。 「エンマさん、お世話になります。みやげば持って来ました。はようたべてくだはり。一段目はケランモチ、二段目はずっとうまかケランモチ、三段目はまあだうまかもんですが、こやつは、川の中で食わんと味が出まっせん。」 エンマさんが三段目の重箱ば持って川につかって、一つ口に入れたら、 「わあっ」 と泣き出してバタグルわした。いつもエンマさんにこきつかわれとる鬼になわでしばらせち、 「エンマさん、私ばほどようしなっせよ。」 と言うちニコッと笑うたげな。 |