![]() 彦一が千仏のどてばもどりよったりゃ球磨川ンふとかがわっぱンでちきて、 「彦一ちゃん、おっとすみくらんぼしゅかい。」 て、いうてきた。彦一もこんがわっぱやつァ、いつも子どんがしりばっかりとって、聞いとったもんだけん、 「うん、そらおもしろかろ、やろか。」 「彦一ちゃん、こるばかけしゅか。」 「よかたい。」 「彦一ちゃんがまけっなら、おが友だちぜんぶに、酒と、そうめんと、鶏の焼き肉ば、ごっそうせにゃんばい」 「よかたい、そんかわりィ、おがかったら、一年間飲む酒と、鮎ばもってけ、出けんときにゃ、そん皿はうちわってよかか。」 「うん、よかよか。」 がわっぱは、「こらしめた。」ておもうち、よるくうどった。どてで、とびこむ用意ばしてかり、彦一が、 「こん川ァ大分深かけん、とぶこむときゃ目ばつぶってとぶこむごてしゆい。」 「こんくんにゃんとァ、目ばつぶらんてちゃよかばってん。まぁよかたい。」 がわっぱは、いっだんうれっしゃして目ばつぶったげな。そん間ァ、彦一ちゃ太か石ばひるうてきといて、 「よかね、一、二、三。」 ドボンて、二つ水の音したばってん、とびこうだた、がわっぱと、彦一がなげた太か石だったげな。彦一ちゃ、がわっぱのとびこうだっばみて、いそいで、きもんなもったまんま、うっつあんもどってしもうたげな。がわっぱは、だいぶんたってかり、もうよかておもうて、浮きあがって見たばってん、彦一ちゃまだみえんだったもんだけん、彦一の息のなんかて、たんがって逃げぢゃあたげな。そりかりいっときして、彦一の家ン庭にゃ、酒一本と、太か鮎の一皿おいてあっ たげな。そりかり、紙ィことわってあったげな。 「彦一ちゃん、おるがわるかった。あぎゃんかけばしたばってん。こっでこらえちくんなり、こりかり子どんがしりゃとらんけん、皿だけはかんにんして。」 そりかり千仏でにゃ、がわっぱは、しりとらんごつなったげな。 |