「彦一、ドジョウばうんとばかりもろうたけん、久しぶり集まって飯ば食おうや。」 と近所の仁が言うてきた。四、五人集まることになって、それぞれ醤油、砂糖、野菜というぐあいに持ちよった。彦一は生豆腐ば2丁持って行った。 「おらあドジョウはいらんけん、その汁の中にこの豆腐ば切らでん入れといてくれ。豆腐ばっか り食えばヨカ。」 そして、急用があるけん、後から来るというて出ていったげな。ドジョウ汁が煮えたってきた。さあもうよかろう、食おうか。となべのまわりによってフタばとって、ホケのホヤホヤする中から、ドジョウばすくおうとした ら一匹も見えん。 「わるがさきに食うたろ。」 と、大げんか。彦一が来て豆腐ばもろうちきゃあもどったげな。ドジョウは煮られたあつさに、つめたか豆腐の中にもぐりこうでしもうとったげな。 |