第49話 あまんじやく

イラスト

彦一の、となりのうちィ金作ちゅうだぁるもすかんもんのおらしたげな。ちょうど球磨川ゃ、鮎つりよっとこれ、彦一がとおりかかって、

「おっさん、鮎つれたかいた。」

て、きいたりゃ、

「うんにゃ、鮎ば、捨てんにきたつ。」

彦一ちゃ、そらきたておもて、にやってして、

「そんなら、おるがひろうてきゃいこう。」

つっとった鮎ば全部もって来てしもうたげな。あくる日、彦一が稲ばかたげちもどりよったら、金作どんが仇うちしゅうておもうて、

「彦一、稲ンとり入れしよるごたるが。」

て、声ばかけたりゃ、彦一も調子ばあわせち、

「うんにゃ、稲のとりすてたい。」

て、いうたもんだけん、金作もよるくうで、

「そんなら、おがひろうちきゃいこう。」

て、いうて稲ばかちいで、もどったげな。とこるが彦一も、にやにやしながり、金作の後はちいて来よったとん、自分がえん前ンとこっで、

「おっさん、稲ひろいいったつな。」

「うんにゃ、稲かりいったつ。」

金作どんも、なんぎなしゃきゃいうたもんだけん、

「かりィいったつなら、もどしてもらいまっしゅか。」

て、いうて稲ばとりかえしたげな。ふっふいいながり、

「せっかく持って来たて、わりィやられたない。」

「なぁんの、かつがれたったい。」

彦一ちゃ、わるうて、うっつぁんひゃったげな。


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