![]() 彦一の、となりのうちィ金作ちゅうだぁるもすかんもんのおらしたげな。ちょうど球磨川ゃ、鮎つりよっとこれ、彦一がとおりかかって、 「おっさん、鮎つれたかいた。」 て、きいたりゃ、 「うんにゃ、鮎ば、捨てんにきたつ。」 彦一ちゃ、そらきたておもて、にやってして、 「そんなら、おるがひろうてきゃいこう。」 つっとった鮎ば全部もって来てしもうたげな。あくる日、彦一が稲ばかたげちもどりよったら、金作どんが仇うちしゅうておもうて、 「彦一、稲ンとり入れしよるごたるが。」 て、声ばかけたりゃ、彦一も調子ばあわせち、 「うんにゃ、稲のとりすてたい。」 て、いうたもんだけん、金作もよるくうで、 「そんなら、おがひろうちきゃいこう。」 て、いうて稲ばかちいで、もどったげな。とこるが彦一も、にやにやしながり、金作の後はちいて来よったとん、自分がえん前ンとこっで、 「おっさん、稲ひろいいったつな。」 「うんにゃ、稲かりいったつ。」 金作どんも、なんぎなしゃきゃいうたもんだけん、 「かりィいったつなら、もどしてもらいまっしゅか。」 て、いうて稲ばとりかえしたげな。ふっふいいながり、 「せっかく持って来たて、わりィやられたない。」 「なぁんの、かつがれたったい。」 彦一ちゃ、わるうて、うっつぁんひゃったげな。 |