第48話 ふしぎなはこ

イラスト

出町ン庄屋どんのよそかりもどってこらしたとこるが、大事しとらしたつぼン、いつんまにか、われとったげな。 庄屋どんな、たんがって、家ンやとい人たちばよばしたげな。

「こんつぼばうちわったたぁだるか。正直ィいえ。」

て、目はさんかきィしにゃあて、はりかかしたてたい。そるばってん、だあるもいうもんなおらんだったげなもん。庄屋どんな、とうとう彦一がえ相談しぎゃこらしたげな。

「なあ彦一、うちわったやつば見つくる、よかかんがえはなかろか。」

彦一ちゃ、いっとき考えよったが、

「そらあな、よかこつんあるばいた。おれまかせときなっせ。」

そぎゃんいうと、彦一ちゃ妙見さんの神主さんがたかり、ふうるか箱ばかってきて、庄屋どんがたでかけていかしたげな。やとい人たちば、せんぶあつめち、そん前箱ばすえち、

「こん箱は妙見さんに伝わっとるそうにゃ不思議な箱ですたい。こんなきゃ自分の名前ばきゃた紙ぎればいれち、のりとばあぐっと、犯人のきゃた字ばっかり残って、あとんもんのつぁ、字の消えち、白紙ィなっとたい。」

彦一ン言うたとおり、やとい人たちゃいっそ名前ばきゃた紙ば箱んなきゃ、入れたげなたい。彦一がのりとばあげち、箱かり紙ばぢゃちみたりゃ、一みゃだけ白紙だったげな。庄屋どんな、たんがって、

「彦一、無実ぁ、平肋ばっかりで、あとはぜんぶ犯人かい。」

て、聞かしたとこるが、彦一ちゃ、

「こん箱はなんでんなかったい。ほんな犯人な平助たい。」

て、わるうちいうたげな。


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