![]() 彦一もわがカカドンにゃ一本まいっとったげな。あしたは熊本まで歩いて行くという前の晩、出立ちのニゴリ酒ばそろっと買うち来て、戸棚に入れといた。カカが、ぜにはやらでにゃおって、酒ばかりいちくろうち・・・・・・と思うて、あくる朝、米のトギ汁とすりかえておいた。 顔も洗わでな、カカにわからんごつキュツと飲うで出かけた。もうこのへんではニゴリ酒のキキメが出んばんはずだが・・・・・・とクビばひねっても一向元気が出ん。そのうちに足がいんなえて来た。熊本へようようのこつでついた。 「彦一、むごういんなえとるごたるが、また二日酔じゃなかっか。」 「なんの二日酔だろかい。酒やつにだまされとるごたる。」 |