![]() あっ年ン秋のこつ、彦一ちゃばばさんのかわり、日向ン生目八幡さんにまいりぎゃ行った時ン話たい。球磨ばとおってかり、九州の背ていうてかる、たあっか山ば越して行かんばんもんだいけん、三日ばっかりかかってかり、よよんこし日向ンふもとン村ンちいたてたい。すっと、そン村ンもンの、ようけんばっかり集まってか、ガヤガヤ言うとっとば見た彦一ちゃ、ちっとばっかり気にかかるこつのあったもんだいけん、 「なんか、あったつな。」 て、きいてみたげな。すっと、 「じつぁな、こん村ン喜作どんていうて、あきないばしてされくひとんおらすとたいな、そん喜作どんな、ほんなこつぁもう四、五日前もどってくるごつなっとったばってん、まだ、もどってこらっさんとたい。そっだいけんあしたどま、山さがしばしょうかて、話しよったったい。あんたは会わんだったかな。」 彦一ちゃ、そん時、ハッて胸ンきたこつのあったもんだいけん 「気のどくばってん、そン人もう死んどらすばい。」 「なんてな、死んどらすてな、あんたは、そうば見たっ。」 「うンね見ちゃおらんばってんな、こっかり一里ばっかり山道ば行くとしゃがにゃ、太か松の一本ありますもん、そん松の木ン下ン深かたんあたり、死んどらすて思うとですたい。」 村ンもンたちゃ、すぐさみゃたいまつばもって、山さんのぼって行かしたてたい。そしたら、ほんなこて喜作どんの、切り殺されとっとん、見つかったげな。そん晩な、庄屋どんがえとまったった彦一が、朝早よう出かきゅうてしよったとこが、代官所ン役人たちンきてかリ、山賊ン手下だろて言うて、ろうやンぶちこんでしもうたげな。彦一ちゃ、役人に、 「あすこんそばば通っとき、からすン一ぴゃきとったけん、そっじゃなかろかて思うて、言うたっですたい。」 て、説明したばってん、彦一ンこっば知らん日向ン役人たちゃ、 「そぎゃんこつの、わかるか。」 て、ゆるさっさんだったげな。彦一ちゃ、ろうやん中で、なっかぶっとったってたい。 |