![]() お城ン裏手ンほうは、だあも見ぎゃこんし、手入れもせんもんだいけん、石垣イ植えちあったつたやつが、土べいイ上がり、お城ン屋根まで、のぼってきとったげなたい。とこうがたい、ある日、殿さんのそるば見つけてかり、 「こっじゃいかん、つたン葉ンしげっとっと、敵やつが、そろっとはいってきた てちャわからんじゃなかか、すぐ取ってしまわにゃわからん。」 役人たちゃ、すぐ人夫ば集めてかり、つたば取ろうてするばってん、もう何年も前かんのっだいけん、なかなか取れんし、しゃいもっでん取ろうとすっと、屋根までうっかゆっとげなたい。そうば見とった役人な、 「こら、わからん、ちょっとよくうとれ、とんさんに言うちくるけん。」 役人な、とんさんのとけいたてかり、 「とんさん、どぎゃんでしゅうか、今、根はうち切っとってかり、枯れちしもうたなら、とるごっすっとしゃがにゃ。」 「うん、よかたい。」 そん話ば、ちょうどきいとった彦一が、 「ちょっと待ってはいよ、そぎゃんこっすっと、つたはとれンごつしなりますばい。」 すっと、殿さんの、 「ばかんこつ、木でん草でんかるっとしゃがにゃ、よおなってしまうどもン、かれちかり取った方が、よかろばい。」 彦一ちゃ、床ン間ンふじづンのかごばゆびしゃてかり、 「こうば見てはいよ、つくっときゃなましかけん、どぎゃんでんまげられますばってん、こぎゃんなってから、どぎゃんもでけまっせんもんな。ふじづるも、つたと同じこつのごたるもんですけん、今とった方がよかっじゃなかろうかて思いますばってん。」 聞いとった、とんさんも役人も、ほんなこっと思うてかり、また、仕事ばはじめらしたげなたい。 |