第30話 彦一と大石

イラスト

さんかんのとこっで、村ン者たちが何かがやがやさわゃどる。ゆんべの大雨で、山くずれンして、太か石のころびだゃて、道イうっぱさまってしもうとるとこるだった。あんまり太か石で、重うして、だあれもどぎゃんもしきらんだったげな。こまっとるとこれ、ちょうど力ン強か男の通りかかったもんだけん、たのうでみたら、

「おら、今、腹ンヘっとるけん、飯ば食わせてくるんなら、その石ァ運んでやりまっしゅたい。」

て、いうた。村ン者な、そんくりゃのこつあ安しいこつ、て、いうて話しおうて、四しゅだきのかみゃ、一ぴゃたゃてごっそうした。男は腹、一ぴゃくうて石のとこりいたて、

「さあ、石ば運ぶけん、おれんせなきゃ石ばのせちくれ。」

みんなぷりぷりはりきゃあて、じぶんでやれといいだした。男は、

「石ゃ運でやるていうたばってん、このせなきゃのせてくれんことにゃ運ばれんばいた。」

て、はってこうてしよったとこり、日奈久かりもどリよった彦一が、こればきいて、

「おっさん、ちょっと待ちなり。」

ていうて、村ンもんに、

「あ〜たたちゃ、その石のとこれ、石よか太か穴はほってくんなり。」

村ン者な、何かしらんばってん彦一のいうごつ太か穴はほったげな。

「おっさん、こんあにゃ、あんた、はいんなり。上かりこん石ばころばきゃて、せなきゃのせちやるけん、そりかり運びきっどもん。」

男は、まっさおなって、がたがたふるいだしたげな。

「運ばんとなら、役人にうったゆうか。」

男は、村ンもんに、さんざんあやまったうえ、金まではるって逃げだゃたげな。あとかり、みんなで、こん石ゃ穴んなきゃころびゃきゃあて、かたづけち、よろこうだげな。


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