第28話 梅の実

イラスト

 八代ンふもとに、わるか銀ぎつねのおって、人ん通っと、わるかこつばっかりしよったげな。ちょうど彦一が球磨川ン鮎つりいたてもどりみち、梅ン木ン下でゴツンて梅ン実のあたったもんだけん、上みたリや、きつねやつがわるとる。はらんたったばってん

 「おい、ありがと、こらあうめえことにうちあたるってこつだろう。ようおしえた。こらぁ少なかばってん、あとかり食えよ。」

 彦一が鮎ば一ぴき木ンねもとにおいて、赤か舌どん出してもどったげな。あくる日、こん狐は、きずだらけで、

「彦一ちゃん、もうわるかこたけっしてせん、ひどかめにおうたっばい。」

「ほう、どぎゃんしたっな。」

「あんたがいったあとかり、役人のぐっさりきたけん、うんとほうびばもらおておもうて、梅ばぐっさりくらわせたりゃ、はりきゃあて、おりばつかまえて、うちころさりゅうでしたっばい。」

「そぎゃんだったな、これからわるかこたしなんなよ。」

きつねも彦一にゃ、かたんだったげな。


吉住酸素工業株式会社 提供
〒866-0846 熊本県八代市弥生町15-10
TEL0965-33-1105 FAX0965-33-3545


とんち彦一話へ戻る