第27話 大ぼらふきくらべ

イラスト

薩摩ン国の甚四どんと、肥後ン彦一どんが、松井さんの前で、ほらふきくらンべばしたげな、どっちも名売ったとんちもンばっかりで、お国ンの名にかけてン太かほら話しばもって来たってたい。はじめ薩摩ン甚四どんが話し出さいたげな、

「薩摩にゃ、桜島大根ちゅうて、太か大根のあるばってん、今年は何さまそん大根のゆうでけて、畑一ミヤァに植わりきらんごたっとのでけましたったい、何さま、まわんの三十尺どまあリましたろ。」

甚四どんの話ィ、松井の殿さんも、家来たちもひったまがってしもたげな。とこるが甚四どんな、にこって笑うて、

「なぁん、この大根がみんな葉なし(話)ですたい。」 て、言うたけん、みんなは、にがわりゃしたげな。こんだ、肥後ン彦一どん、どぎゃん話ばすっどかて、まっとったりゃ、「エヘン」て、一ちょうせきばりゃばすっと、殿さんの前さん出ていたち、おじぎばして、

「こん前ンこっでした、ちょうど、わたしが「ふだん辻ン」とこるば、いきよりましたりゃ急に大雨ン降っじゃあて、ぬれてこまっとりましたりゃ、侍さんの二、三十人どまゆるっとはいるきる太か、ふきの葉ばもって来て、そん中ァ、ぬれとった人たちば全部入れちもろうて、大助かりしましたたい。」

こン語ば聞ィとらした松井さんも、

「彦一、八代にゃ、そぎゃん太かふきのあっとかい。」

て、言うて、ひざばのり出ァて、聞かしたもんだけん、彦一も

「はい、殿さん、こらぁ、ほらァふき、ですたい。」 て、言うたげな。

薩摩ン甚四どんも、彦一ァ、おれよか一みゃあ上ばいておもいながり、もどらい たげな。


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