第25話 はたけのうね

イラスト

ながしで球磨ン相良さんな、塩にそうにゃ困っとらすて、聞かした松井のとんさんな、彦一ィ塩ばとどくる役目は言いつけらしたってたい。彦一ちゃ、雨ン止むとば待つとって八代ば出かけたげな。ひるごろ、領地ざかいンとうげにちいた時、旧道じゃせまんかし、ひどか坂ンいくつもあるもんだいけん、馬子たちゃ新道さん行こうてしたばってん、彦一ちゃ、

「だゃじな旅だけん、旧道さん行きまっしゅかい。」

て言うて、どんどん旧道ば行くとげな。十六頭ン馬にちいとった馬子どンたちゃ、ちったブツブツ言うたばってん、

「しょんなかたい。」

て、彦一ンあて、ちいて行ったげな。

旧道じゃ雨ン後で、岩ンゴツゴツ出とったり、ふとか水たまンのあったりしてかり、なんぎしいしい、よんよこし、球磨川ン新道さん出ちきて、ほっとしたげな。

丁度そん時、太か荷物ばかるてかり、球磨川ン道ば、こっちゃん上ってくる旅あきないに会わしたってたい。

「馬子どんたちゃ、よう旧道さんきたなあ、新道じゃ、とちゅンとこんのこん雨で、うっかえとったばい。」

そるば聞イた馬子どんたちゃ、ふのよかったて思うて彦一ばみたりゃ、

「うんね、おら知っとったっじゃなか、ひょっとすっとてにゃ思うとったばってん、よかったなあ。」

そしてかり、

「昨日たいな、雨ンちっとやんだもんだいけん、畑さん出ていって見たったい。すっと、新らしかうねは、だらってうっかえとるばってん、古かうねんほうは、ちゃんとしとっどが、そっだいけん、ひょっとすんならて、おもたったい。」

馬子どんたちゃ、彦一ンごらにゃかんしんしたげなたい。


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