第24話 はなおうじ

イラスト

こんごろン若侍たちゃ、ビロードン着もンば着っとんはやっじゃたもんな、

「いっちょん武士らしゅうなか、着ちゃでけん。」

て、ふれば出さしたげな。そりばってん、そろっと町ン中で、着て歩くもんのおって、きかしたもんだいけん、彦一ィ相談さしたげな。

「とんさん、萩原ンどてン桜も、もう見ごろでっしゅな。いつ花見ばしなはりますか。」

すっと、とんさんも彦一ン気持ンようわかっとらすもんだいけん

「そぎゃんたいね、あさってぐりゃどぎゃんだろか。」

「よございますな。やりまっしゅか。」

花見ン日は、そらもうよう晴れて、よか天気だったげな。そん日は、とんさんのビロードンきもんば着てよかて、いわしたもんだいけん、若侍たちゃ、もっとるビロードンきもンのよかつばきて、大いばりだったってたい。

そこんとこれ、彦一が、そらもう、げさっかつの、よそわしかつの、きたァなかなりばした町人ば、ぞろぞろつれてきてかり、とんさんの前に出てきたげな、とんさんのそん町人たちばよう見らすと、ぜんぶぞうりばっかりゃむごうよかつば はいとったげな。

「彦一、今日はまたよかぞうりばはいとんね。」

「ああ、こんぞーりかいた。こらですな、こんごろん町人の間ではやっとる、ビロードンはなおンぞーりですたい。」

「ほほう、こりゃおもしろか。わしン家来ン中にゃ町人のはなおば、きとっとんおる。」

て、言うてわらわしたげな。
そりかりさき、ビロードン着もンば着っとしゃがにゃ、

「や、や、こりゃ、はなお氏……。」

て言われち、だぁれんきるもんのなかごてなったげなたい。


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