狐がいつ仕返しばしゅうかとたくらんでおるげな。と聞いた彦一は、師走の支払いにキュウキュウしとった時ではあるし、朝、暗い中に家の前の往還に、米びつの米ばずーっとこぼしておいて夜のひきあけに、
「朝からコギャン散らきゃあて困ったもん、小川通いの荷車ヤツだろ。あした落ちとるならどぎゃんしゅう・・・・・。」と言うてはわきよせた。
そるば聞いとった狐は、翌朝、うんと米ばこぼしといたげな。こらあ困った、と言いながら彦一は十日もつづけてはわきよせたので、よか正月どんば迎えたげな。