第18話 テングとかくれみの

イラスト

竜峰山にてんぐの松があるばってん、そこにゃかくれみのばもったてんぐどんがおらすげな。そん山に彦一はのぼったったい。

高か岩ん上あがって、たかんぽば目にあててながめながら

「わァ、トンさんな、あぎゃんとこっでごっそうくいよらす、うまかごたるね。」

と、大声ばあげた。すると、てんぐがとんできて、

「おい彦一、そん目がね、おれんにもかさんかい。」

「バッテンてんぐさん、こら人にはかされんとバイ。」

「そぎゃんいわでん、一度でよかけんかさんかい。」

「そんなら、てんぐさん、あんたのかくれみのとかえっこしてみまっしゅか。」

てんぐはしょっこつにゃァつらで、みのばかし、どぎゃんとんみゆっどかと思い、岩の上からお城ばみたげなたい。ところが何も見えん、

「彦一、こら何も見えんたい、どぎゃんすっとか。」

「そらな、さかさんたい。」

といいながら、かくれみのばきていっさんに山ばかけおりたげな。

てんぐどんな、だまされたっば知ってカンカン、それから顔はあこなったっげなたい。

彦一は町にもどり、だれも知らんもんだけん、すぐ酒屋で酒ば腹一ぱいのうで、よっぱろうてそこでねむってしもたったい。

ところが、みのから足が出とったもんだけん主人から見つかり、みのはとられ、もやされてしもうたげなもん。

そこへてんぐが、おっかけて来て

「こら彦一、ぬしゃ、よくもおりばだましたね、はようみのばもどせ。」

「あんな、てんぐさん、あんみのばきとったバッテンここん主人にみっけられたっばい、かくれみのてうそたい。」

「そぎゃんこたなか、みのばはよやれ。」

「バッテンな、てんぐさん、そんみのは灰になっとるけん、その灰ば体につけなっせ。」

てんぐもしょんなしに、その灰ば体につけたら見えんごつつなったけん、ほっとして山にもどったげなたい。とこっが汗んでてみんな灰は落ちてしもうたげな。


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