第16話 太か友だち

イラスト

彦一が、めずらしゅう神妙になって、つきあいの百姓家の仕事のヒマの時、馬ば借って、竜峰山にタキギとりに行ったげなたい。日暮れになって、馬に一ぱいつんで帰りよって風呂屋の前まで来たら、そこ主人が呼 びとめた。

「そのタキモンないくらにしとくか。」

「百文であげまっしゅ。」

「ちった高かごたるばってん、馬の背中のは全部だろたい。そんならよかたい。」

タキギは、全部おろして、だいじなクラも綱も何もかんもとってしもたげな。
二、三日してから、

「おじやん、日暮れ風呂に入れなっせな。わしがツキアイも連れて来るがよかろうか。ちったふとかばってんがよかろ。」

「ああ、よかよか。」

この前の馬ばひいて入ろうとしたけん、ことわってクラも綱ももどさしたげな。


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