第15話 旗という字

イラスト

正月のドンドヤの前の日のこつだったげなたい。子供が十人ばかり集まって、ドンドヤのしこ(準備)ばしておった。竹はマン中に立ちゅうして、そん上につける色紙に「ハタ」という字ば書こうとしたばってんが、一人も知らんげなもん。

「カナで書いて、うっちょこや。」

「そるばってん、正月だけん漢字で書かんとエンギの悪かぞ。」

そこへ、彦一が通りかかった。

「ああ彦一おじさん、字ば教えてはいよ。」

「ああたは、そうにゃ頭のよかけん知っとんなっど。」

「ハタという字たい。」

さすがの彦一も漢字はトコロドコロしか知らんだったげな。

「ハタという字かい。そらぁね、竹へんにピラピラと書くとよかばい。」


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