「ゴインキョさん、めずらしかもんが手に入りましたけん、見に来なりまっせん
か。」
と、ブゲン者のゴインキョさんば連れて来た彦一が、掛軸ば見せた。女が傘持って立っとる絵だった。
「雨の降る日にゃこの傘ばさします。めずらしいものですばい。」
ゴインキョさんが雨の日に行ってみたら、ほんなこて傘ばさして、ちょっとスソばからげとる。
「おれに、ゆずってくれんかい。」
「どうし、どうし、こらぁうちの家宝にしますとです。」
と、彦一がもったいつけたけん、しこてこ金ばやって、ようようゴインキョさんは、自分のものにしなったげな。ばってん、雨が降って来てもただ傘ば持って立っとる。
「おい彦一、だましたばいな。」
「ゴインキョさんな、飯ば椀にもってやんならんでしたろ。そっで死んだっですたい。」
晴、雨、二枚の絵ばかけかえて見せたっげなたい。
|