![]() 彦一がブラッと八代の町を歩きよったら、魚売りが、威勢のよか声で、 「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 と、ふれて行くのに出会った。 「ようし、」 と思って、 「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 にひっつけて、 「キャクさっと、キャクさっと。」 と、太か声でおめく。 「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 「キャクさっと、キャクきっと。」 魚売りが、カンカンはらきゃあて、 「彦一、どうしてじゃまくるか。この鯛ばみてみい。こぎゃんイキのよかっぞ。そる ばキャクさっと(くさってる)は何ごとか。」 「そるばってん、その鯛ば買うて、キャクさっと(客をする)だろうもね。」 魚売りは、キャフンとまいって、太か鯛ばやってことわったげな。 |