第12話 キャクさる鯛

イラスト

彦一がブラッと八代の町を歩きよったら、魚売りが、威勢のよか声で、

「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」

と、ふれて行くのに出会った。

「ようし、」

と思って、

「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」

にひっつけて、

「キャクさっと、キャクさっと。」

と、太か声でおめく。

「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 「キャクさっと、キャクきっと。」

魚売りが、カンカンはらきゃあて、

「彦一、どうしてじゃまくるか。この鯛ばみてみい。こぎゃんイキのよかっぞ。そる ばキャクさっと(くさってる)は何ごとか。」

「そるばってん、その鯛ば買うて、キャクさっと(客をする)だろうもね。」

魚売りは、キャフンとまいって、太か鯛ばやってことわったげな。


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