第10話 かねのなる木

イラスト

彦一が、京都の本願寺まいりばしたげなたい。そばの宿屋にとまったら、そこ主人が、むごう庭造りが好きで、自分の庭ば自慢して見せたげな。

「フム、なかなかよか庭でござすな。そるばってん惜しいこつにゃ、じゅうりカズラと、かねのなる木がござっせんな。これがあるとまあだウチ上りますばい。さいわい肥後八代の私のうちに持っとりますけん、あげまっしゅ。」

と言うたげなもんだけん、主人はよろこうで、ごちそうばうんとこしょしたげなたい。もどりに、彦一について八代まで来た主人は、彦一のうちの狭か庭に立って、キョロキョロしとるげなもん。右と左に這うとるゴリばさして、

「ゴリとゴリでじゅうりカズラですたい。」

シュロの木ばさして、

「こやつで、寺の鐘のなるシコ木ば作んなっせ、カネのなる木ですたい。さああげまっしゅ。」


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