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極上鰻に舌鼓・・・140年の歴史と伝統を誇る鰻専門店『水前寺東濱屋』。これぞ、日本一!

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 明治10年創業、140年の歴史と伝統を誇る鰻専門店『水前寺東濱屋』。

 同店に初めて足を運んだのは、前職の新聞社時代であった。当時のニュースカイホテルで2日間に亘るセミナーを主催する前日に、招聘した講師と共に会食をすることになった。鰻が大好物と言うので、選んだのが同店(当時は料亭)であった。

 小川の橋を渡ると、右側に古い料亭の屋敷が見えた。そこが『水前寺東濱屋』(当時の店名は東濱屋)であった。座敷中央に案内され、最初に目についたのが風情ある中庭である。庭向こうに小川が流れ、そのせせらぎの音に癒されながら、料理が待つことにした。

 さあ、会食の始まりだ。しかし、楽しい会食というのに、皆、黙っている。黙っているのではなく、余りの美味さに言葉もなく、黙々と食べている。鰻肝も弾けそうに大きく、美味い。メインの鰻重が出されたが、とんでもないものだった。

 外側はカリカリと、中はフワフワと。分厚い極上鰻二匹の頭と尻尾を取り除き、一人前が二匹の鰻の最高の部位で盛られている。高級黒毛和牛であれば、シャトーブリアンの部位である。鰻とタレが絡み、上質の湯気立つ熱々の白ごはんと相まって、また、絶句。頬が落ちるとは、このことを言う。

 それから何年経ったろうか。熊本県立図書館がこの老舗の場所に建つというので、致し方なく、道向かいに同店が移ることになった。その時、久しぶりに足を運び入れ、暖簾をくぐったのである。

 同店は代替わりとなり、若旦那と若女将の二人、そして職人が数人所狭しと走り回っていたことを思い出す。それから、若女将が筆者を見て、固まった。筆者もその姿を見て、腰を抜かす。

 何と、20年ぶりの再会である。実は筆者が2歳の頃から遊び回っていた幼友達の従姉妹で、当時、何度か会ったことがあった。「お久しぶり。ここの若女将さんになっているとは、つゆ知らず。」と言いながら、椅子に腰掛けた。

 お客が多かったので、長話はできなかったが、出された極上鰻重は、数年前に食した料亭のものと同じだった。いや、外側のカリカリ感が程よく、以前よりも焼き方が変わったのか、鰻の肉汁を包み込み、その美味さが倍増していたのである。

 現在、開店から140年の歳月が経っているが、代替わりとなり、研究好きの若旦那が焼き方を高熱に切り替えて、昔ながらの歴史と伝統を受け継ぎながら、今の時代に合った、グルメ通を唸らすものを創り出していた。

 三本の菜箸をアクロバティックに使い、鰻を焼いて行く。先ずは、素焼きをする。オーダーを受けてから焼き始めるが、長年使い続けている秘伝のタレにジャブっと付けて、炭火の火の粉が舞い上がる上に載せて焼く。その連続だが、三本の菜箸の上を滑るように踊る鰻が、生きているように見えた。

 料亭の頃に厨房を覗いたことはないが、このように厨房で取材をしたのは初の体験。近距離から撮影しているので、カメラ本体もレンズも熱く、顔も体も高熱で汗が噴き出していた。なるほど、あの機械式の吹子が焼き方の進化をもたらしたのだろうと。

 激しい風切り音とともに、再び火の粉が舞い上がる。生臭いと思っていた鰻が、別物の芳ばしい鰻重へと変化して行く。撮影中に、恥ずかしながら、何度も腹の虫が鳴り響く。堪えきれずに、お茶を少々飲みながら、また撮影を続けた。

 撮影を終えて、テーブル席に出されたのが、写真下の特上鰻重である。色、艶、香り、形、申し分のない鰻重を見て、放心状態。分厚い鰻だ。山椒を掛けて、熱々のご飯の上に載せて、口の中に含む。一噛みした瞬間に、鰻の蒲焼特有の香りが鼻に抜ける。これは、堪らない。

 ご飯の量が多いと思いきや、分厚い鰻の蒲焼き4枚と共に、一気に完食した。これは、これは、絶句である。肝吸いも流石に美味い。香の物で〆て、お茶を流し込む。そして、最後のデザートを食して、完食。

 標題に『これぞ、日本一!』と書いたのは、数年前に友人が東京からセレブで超グルメ通を同店に連れて行き、その時、超グルメ通が発した言葉らしい。世界中の贅沢グルメ三昧している人なので、『これぞ、日本一!』は、リップサービスにあらず、素直な感想だったに違いない。


▼鰻を焼く店主 吉田明さん
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▼三本の菜箸
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▼仕上げ
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▼盛り付け
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◎水前寺東濱屋
熊本市中央区出水1-8-27
096-381-7241
定休日:毎週水曜日(月に1日程度の不定休あり)
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◎ロゼッタストーン公式サイト(since 1995/熊本県第一号WEBサイト)
 https://www.dandl.co.jp/Link
写真・文責:西田親生

               

  • posted by Chikao Nishida at 2022/8/22 12:00 am

押し付けは、自己満足の世界。

▼記事と写真は関係ありません

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 コロナ禍により、毎日、思い通りに外食できない状況下にある。本日は、コロナ禍前、熊本地震前のキュイジーヌ研究を兼ねて取材していた頃の料理を思い出したのだった。B級から高級料理まで、色んな食事処に足を運び、時には度肝を抜かれ、時には一口で店を出たこともあった。

 人気レストランは、大抵の場合「名物」というものが存在する。毎日食べに行っても飽きない「名物」である。仕事が忙しい時に、ふと思い出して急に食べたくなる、その店の「名物」。また、四季を通して、旬の食材を最高の調理法にて提供してくれる店の「名物」などなど。

 「名物」が存在する食事処は、当時は、いつも行列ができていた。大阪「自由軒」のドライカレー、横浜ハングリータイガーのハンバーグとステーキ、博多の屋台ラーメン、長崎思案橋の一口餃子店、熊本のビーフウィズライス店(廃業)などを思い出したのだった。

 ちょいと高級料理になると、東京浅草鉄板焼店の超レアな生々ハンバーグ(今は生では出さない)、ザ・リッツ・カールトン東京鉄板焼の蝦夷鮑地獄焼きと門崎丑ステーキ、ホテルオークラ桃花林のフカヒレ姿煮、ウェスティン都ホテル京都「洛空」のカレーライスなどである。

 振り返れば、「名物」と言われるものは、その店でなければ食せない、唯一無二なるオリジナル料理、または、レアな高級食材を使った料理に大きく分けられるようだ。地方では、その店でしか食せないB級「名物」が多いが、大都市部の五つ星ホテルなどでは、超レアな高級食材の「名物」が沢山ある。

 ただ、B級料理であろうが、高級料理であろうが、決して「押し付けメニュー」ではなかった。お客が我慢できず、気が狂うほどに食べたい料理を提供しており、常にお客目線で進化していた。たまさか、仏頂面で横着な態度の食事処もあるが、まあ、それはそれとして面白く奥ゆかしく思える。

 ところが、外海を知らぬ食事処は、お客のニーズを分析してメニューを開発するというよりも、自分たちの尺度だけで、それも行き当たりばったりの実験メニューを提供しているところが多いように思えてならない。それは、単なる自己満足の世界であり、絶対にファンが付くような料理になり得ない。

 何故なら、原価率ばかりに目が向けば、食材の質低下をもたらし、どんなに調理で誤魔化そうとしても、幅も深みも皆無となり、ワンパターンの不人気料理ばかりの繰り返しとなる。それが常態化すると、自己満足のための開発商品は「名物」になることもなく、客足は遠のいてしまう。

 コロナ禍となり、最近、頓に感じるのが、この自己満足メニューの存在。すこぶる単純な調理にて、ごちゃ混ぜ感を拭いきれぬ盛り付けにて、食欲をそそるどころか、二度と食したくないものが次から次へと。笑顔もない、会釈もない、客とのコミュニケーションも遮断しているとなれば最悪だ。

 更に、旅館やホテル経営側の人間がグルメ通でなければ、とんでもないメニューが飛び出してくる。舌馬鹿の経営者が大きな顔して、「おい、こんな料理はできないか!?」と言って、料理人を困らせるケース。舌馬鹿人間が開発させた料理は、客が喜ぶはずがなく、「名物」になるはずもない。

 要は、料理メニューが「押し付けメニュー」では、自己満足をお客に強要することになり、食す側のお客からすれば「要らぬ世話」になる。お客が頭を下げて「どうしても食べたいので作って欲しい!」と言うような「名物」でなければ、そのメニューは長生きするはずがない。

 「名物」のない食事処は、狭い地域の知り合いだけが常連となり、県内外からわざわざ足を運ぶ客などいない。勿論、気楽かもしれないが、折角プロの料理人として店を経営しているのであれば、もっと外海を見て、唯一無二なる「名物」を開発し、多くの人たちの幸せ作りに尽力されては如何だろうか!?

 いやはや、死ぬまでに、どれだけの「名物」を発見し、どれだけの「名物」に酔いしれることができるのか!?時間的にも物理的にも経済的にも限界はあるものの、できることならば、生きている内に、少しでも美味しい料理を口にしたいものである。粗食の一生よりも、幸せな食の一生を選びたい。


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写真・文責:西田親生

       

  • posted by Chikao Nishida at 2021/9/4 12:00 am

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